【東京23区ランキング】街の活気を可視化した「新陳代謝率」、23区で高いのは?不動産市況とも連動するそのデータ
(牧野 知弘:オラガ総研代表、不動産事業プロデューサー) ■ 人が入れ替わる地域ほど不動産市場が活発になる 【ランキングはこちら】3位豊島区、2位新宿区、1位は…?下町・台東が4位のワケは? 不動産業に携わっていると実感するのが、不動産は社会生活を営むための重要なインフラであるということだ。 人は暮らすために家を確保する。現代の働き方の主流は事務労働となっているが、多くの事務労働者はオフィスというハコの中で勤務し、商業施設で日々の買い物をし、飲食を楽しみ、ホテルに滞在し、寛ぐからだ。 そして街の経済が発展し、地価が上昇するには一定の法則があることに気づかされる。街というプラットフォームで人の出入りが多い街ほど街に活気が生まれ、不動産が活発に動き、結果として地価が上昇するということだ。 なぜかといえば、街にやってくる人が多いと、住宅の売買、賃貸借が活発になる。転入してきた人は街を探検し、引っ越しを含めてたくさんの買い物をする。飲食店に顔を出し、お気に入りの店を見定める。 街を出ていく人が多ければ、人の入れ替わりが起こり、家を売る、貸し出すことが増える。家の価格も相場価格で取引され、家賃も新規賃料で募集できる。 不動産マーケットが好調であれば、上昇速度が自然と速まる。地元で商売を営む商店主は新規顧客を掴もうと新しいトレンドに敏感になる。 これを私は「街の新陳代謝」と呼んでいる。一定数の人が常に「入れ替わる」状態にある街が、経済が成長し、結果として地価、資産価値が上がるのだ。
■ 新陳代謝率が高い街はどこ? 不動産を購入、投資する場合、多くの人は建物の立派さに目を奪われがちだが、そうではない。建物が位置する街で人の出入り=新陳代謝が活発であるかどうかがその解答だ。そこで東京都内における街の新陳代謝状況と地価の変動率について東京都内の各行政区で比較を行ってみよう。 なお分析にあたっては各行政区別に転入者と転出者の合計を新陳代謝数とし、2023年中の数値を集計、23年1月1日の人口に対し、どれだけの新陳代謝が行われたかを代謝率とした。また公示地価は各行政区の平均値(住宅地、商業地を含む全用途の平均)を変動率で示した。 結果は驚くべきことに、新陳代謝数と地価増減率の間には見事な相関関係があることがわかる。 全国において経験値的には代謝率が10%を超える街、つまり全人口の1割が1年間で入れ替わる街が、不動産が良く動き、地価が上昇する傾向にある。もちろん地価はそれ以外の理由、たとえばブランド立地である、新しい産業、工場などが進出したなどの要因で変動することがあるが、おおむね相関関係があることが確認できる。