「我が子を傷つけずにはいられない」…DV夫の妻への暴力が、子どもたちへの虐待に波及する「DV連鎖」の闇
気がつけば夫のDVが日常に
「私は子どもへの虐待がどうしても止められないことに苦しんでいます。子どもを傷つけずにはいられない自分と、私をそういう人間にした夫や夫の両親が憎くて仕方ありません」 【マンガ】「死ねばいいのに」モラハラ夫に悩む女性が我が子をネットに晒し始めた理由 と話すのは、野口夏希さん(仮名・42歳)である。 次男でありながら、実家の農業を継いでいた夫・哲史さん(仮名・50歳)は跡取りとして重宝されていたが、都会でサラリーマンをやっていた長男がリストラされて戻って来たことで政権交代。長男至上主義の義両親は手の平を返すように夫を冷遇し、とうとう哲史さん・夏希さん一家を自宅から追い出した。 あまりの理不尽さに怒りを覚える哲史さんは、その不満を妻へのDVで晴らすようになったという。 『「子どもへの虐待が止められないんです」…我が子を傷つけずにはいられない42歳主婦が訴える「DV夫と義両親」への恨み』よりつづきます。 「夕飯の支度が遅い、風呂が沸いていない、夜の生活に積極的ではない…夫は些細なことで私を怒鳴りつけ、私を平手で思いっきり叩きつけるようになりました」 哲史さんの夏希さんに対する暴言や暴力は、子どもたちが寝た後か不在の時に限られていた。 「夫婦ふたりだけになると、夫はお酒を飲んでくだを巻きます。とても理不尽で、『お前もうちの親と兄貴がクソだと思うだろ?』みたいなことを言われ、『ホントだよね。ひどいよね』などと安易に同調すると、『お前は俺の家族を侮辱するのか!』と叱られます。 夫が酒の力を借りて『何で俺がこんな目に遭うんだよ』と嘆いている時には、どんな慰めの言葉をかけても『お前に俺の気持ちがわかるわけないだろう!?バカにしてるのか』と責められます。 それで押し問答の後に『やってられるか!』といって、私を殴ったり蹴ったりする。気がつけば、それが私の日常になりました」
母が子どもに吐いた恨み節
夏希さんの身体は常に痣だらけになり、偏頭痛や胃痛にも悩まされるようになったという。 「もう、立っているだけでもつらい状態でした。それでも家事や子育ては待ってはくれません」 全身の痛みに耐えながら、小学生の長女、幼稚園児の長男、乳飲み子の次男と3人の子どもたちの相手をしていた夏希さんは、ある時、抱き付いて来た長男を突き飛ばしてしまう。 「抱き付かれた瞬間に腕と背中に激痛が走ったので、反射的にやってしまいました。長男は震えて大泣きしました。長女が『大丈夫だよ。ママはパパとは違うから』みたいなことを言ってあやしていたので、『それはどういう意味?』と聞いたら『ママがいつもパパにぶたれたりしてるから…』と言いました」 この一件で、夏希さんは、すでに子どもたちが、父親が母親にかげで暴力をふるっていることに気づいていたことを知った。過剰な夫婦喧嘩やDVをみせることは、子どもたちの心に負担を強いる。近年は「精神的虐待」だと認知されている親による子どもたちへの虐待のひとつだ。 このような状況下、本来であれば、夏希さんは子どもたちへの悪影響を心配するべき局面であるが、彼女の口から出た言葉は違ったという。 「それって、アンタたちはママがパパに暴力を振るわれているのを知っていて、知らんふりしていたってことだよね?」 これ以降、夏希さんの家族は、子どもを巻き込んで異常な状態に陥っていく。