「我が子を傷つけずにはいられない」…DV夫の妻への暴力が、子どもたちへの虐待に波及する「DV連鎖」の闇
「パパ、やめて!」
「これが尾を引いたのか、その夜、私が夫に殴られていると、寝ていたはずの長女と長男が寝室から飛び出して来て『パパ、やめて!』と夫にすがりつきました」 驚いた哲史さんは「ごめん、パパが悪かった」「もうしないから大丈夫だよ」など反省の言葉を繰り返しながら、子どもたちを寝室に連れて行ったというが、寝かしつけを終えて戻って来た時には形相が変わっていたという。 「私の耳元で『お前は俺を悪者にして楽しいか!?』と囁きながら、馬乗りになってクッションを私の顔に押し付けてきました。すごく苦しくて窒息死するかと思いました。強い力で腕をひねりあげられたせいで肩も脱臼しました」 その後も哲史さんのDVを子どもたちが制するたびに、夏希さんがさらにひどいDVを受けるということが繰り返され、とうとう夏希さんは「子どもたちは私を助けようとしているのではなく、夫の暴力に加勢しているのでは?」という「妄想に取りつかれた」という。 「本当は無意識のうちに私自身も子どもたちを、ストレスのはけ口にしていたのかもしれません。『お前たちが余計なことするから!』と罵り、気が付けば、夫が私にしたようなことを子どもたちにしていました」
壊れてしまった一家の悪循環
母親から精神的・肉体的に虐待を受けるようになった子どもたちは、父親に助けを求めるしかない。 「どういう風に夫に“告げ口”をしたのか知りませんが、夫から『お前は子どもたちを虐待しているらしいな?』と凄まれ、次の瞬間身体が2メートル近く吹っ飛ぶくらい、激しいパンチをくらいました。夫は子どもたちを傷つける私が許せなかったのだと思います」 子どもたちを溺愛する夫からの報復を恐れて、夏希さんは腫れ物でも扱うように子どもたちに接するようになったというが、 「イライラが抑えきれずに、つい手をあげてしまうことが続きました」 そんな夏希さんを「それでも母親か!?」と夫は言葉と暴力で痛めつける。それを子どもたちは襖で隔てた隣の部屋から見聞きし続け、心を痛め続ける。その態度に腹をたて夏希さんが手をあげる――。義両親の次男の冷遇から始まった悪循環は、次男一家を壊していった。