超高額「Vision Pro」でアップルが実は考えていること、アップルの「次の屋台骨」になる可能性は?
■「ポストスマホ」ではなく「ポストPC」 アップルが見せようとしている「空間コンピューティング」とはどのようなものなのだろうか? 筆者は2月に購入以来、ほぼ毎日、なんらかの形でVision Proを使っている。そこで感じるのは、アップルがVision Proで短期的に置き換えようとしているのは「スマホではなくPCだ」という点だ。 スマートグラスに類する機器は、一般的に「ポストスマートフォンだ」と言われる。どこでも持ち歩いて使われるスマホの代わりに、メガネ型のデバイスで情報を表示して使う……という発想だ。
ただ現実問題として、これは非常にハードルが高い。屋外は明るい場所と暗い場所の差も激しく、熱や寒さ、埃などの厳しい条件もある。その中で安全性を確保し、さらに600グラムのヘッドセットをメガネレベルの軽さにするのには、まだ相当に時間がかかる。アップルも当然そのことはわかっている。だから、Vision Proがストレートに「ポストiPhone」である、と考えてはいないだろう。 だが、これが「ポストPC」「ポストタブレット」だったらどうだろうか?
現在のディスプレイが持つ「四角い画面の中で作業する」という制約を超え、主に屋内で、自分がいる空間を生かし、作業をしたりコンテンツを楽しんだりするデバイスは、十分に可能性がある(写真4)。実際、Vision Proではそういう働き方・楽しみ方がすでにできる。 コストや重量はもちろん、操作性など、いろいろと改善すべき点はある。だが、Vision Proをつけてみると、四角いディスプレイから空間全体がディスプレイとなった世界の可能性を確かに感じられる。
テレビやPC、タブレットとそれらに使われるディスプレイすべてが1つの機器で置き換えられるとすれば、いくらなら支払うだろうか? 3499ドルは高いかもしれないが、これが1500ドル・2000ドルになると、話は変わってくるだろう。 ■課題は「頭に何かをかぶる」という不便さ 現状、スマホを置き換えるヒット商品を作るのは、どの企業にとっても困難なことだ。アップルも、ストレートに「ポストiPhone」を作ってはいない。しかし、PCやタブレットなどの世界が変わるなら、スマホもその影響を受けるだろう。