超高額「Vision Pro」でアップルが実は考えていること、アップルの「次の屋台骨」になる可能性は?
■「目線」と「指」で操作 2つ目は「操作」。XR機器のほとんどは、コントローラーもしくは両手で操作を行う。目の前に浮いているものを「触って」操作するイメージだ。一方、Vision Proにはコントローラーはない。手を使って操作するのだが、他の機器とはその使い方も違う。なぜなら、操作を「目線」と「指」で行うからだ。 手を持ち上げて空中のものを触る操作は直感的だ。一方で、手をいちいち上げるのは面倒で、手も疲れてくる。コントローラーを使うならなおさらだ。だがVision Proはちょっと違う。手を上に持ち上げる必要はない。操作したい場所に「視線を合わせる」動作をして、親指と人差し指を打ち合わせる「タップ」動作をすればいい。
文章だとイメージが湧きにくいが、要は視線をマウスカーソルの移動、タップをマウスのクリックだと考えればわかりやすいだろうか。若干の慣れが必要だが、手を無駄に持ち上げる必要はないし、素早く使える。 空間に浮かんでいるものを目線で見て、指でつまんで移動する……という操作は、まさに、Vision Proがもたらした新しい体験と言える。 Vision Proが優れた製品なのは疑いない。だが、いきなり何千万台も売れることはないし、すぐにアップルの収益源になることも考えられない。理由はシンプルだ。3499ドルから、という価格設定であるが故に、大量に売れるとは考えづらいためである。
Vision Proがこのような価格帯で売られることになった理由は、品質と大きく関わっている。 前出のように、Vision Proは表示品質が高い。理由は、ディスプレイ・カメラ・プロセッサーといった主要パーツに、ハイエンドなものを採用しているためだ。特にディスプレイとプロセッサーは、XR機器として見て破格な品質である。 ■高価ゆえに利益貢献は先、あえて未来を見せる ディスプレイは、片目4K弱の解像度をもつソニー製のマイクロ有機ELディスプレイを2つ使っており、プロセッサーは、MacやiPadの上位機種に使われている「M2」。さらに、位置認識などの処理を専用にこなすものとして、「R1」という専用プロセッサーも搭載している。これらの原価だけで1500ドルを超えていると予想されており、他社製品よりもかなりコストがかかっている。3499ドルという売価ですら、利益はほとんど出ていないだろう。