超高額「Vision Pro」でアップルが実は考えていること、アップルの「次の屋台骨」になる可能性は?
内部構造も複雑だ。他の機器では省かれることも多い「視線認識」も、ひときわ高精度なものを搭載している。目と目の間隔(IPD、瞳孔間距離)の調整も自動。他社なら手動で行い、コストをかけない部分だ。 価格と同様にプライオリティを下げられたのが「重量」だ。Vision Proに対する批判の多くは「つけ心地」の部分に集中している。本体重量が約600グラムあり、その上バッテリーも外付け(写真)であるため、取り回しも良くない。それを頭につけるため、フィッティングは極めて重要。ズレが大きく、バンドを強く締め付けることになると顔にも負担が大きくなり、不快感が増す。
コストも重量も、現在の技術では解決が難しい課題。だから他社は一定の「割り切り」のもと性能と価格を落とした製品を作るやり方を選んでいる。逆に言えばアップルは、普及や短期的な収益貢献よりも、品質の高さを優先した……ということなのだ。 アップルはなぜ品質を最優先にしたのか? それは、彼らがいう「空間コンピューティング」という世界を、最初からできるだけ、理想に近い姿で見せたかったからだろう。 コンシューマ市場向けのXR機器は、現状での市場特性がゲーム機に近いため、多くの場合、価格を抑えて販売されている。数が増えてからソフトウエアやサービスの収益性が高まっていく、という構造だからだ。
ただその結果として、画像の解像度は低めで、性能もギリギリ。MRによる画像にも歪みが出やすく、「自然な体験」にはなっていない。 しかしアップルは、Vision Proでゲーム機のようなビジネス構造を目指さない。機器を使うことで便利で魅力ある体験ができる、という点を狙う。別の言い方をすれば、アップルは、現状理想に近い体験を提示することで、「空間コンピューティング」に対してマイナスの要素を取り除き、先を見せることが重要と判断している、ということになる。