災害や大切な人との死別、子ども同士や先生からのいじめ……トラウマをもつ子どもをさらに打ちのめす出来事
大切な人との死別がトラウマをともなうと、前に進めなくなることも
保護者やきょうだいなど、子どもにとってかけがえのない存在が亡くなったあと、子どもの心身の不調や行動に変化が起こることがあります。 通常は、ゆっくりと故人の死を受け入れられるようになっていきますが、トラウマをともなう場合、その過程が途中で止まってしまいます。トラウマをともなう場合というのは、たとえば災害や事故など、突然の出来事による死、身体的損傷を伴う自殺などによるものです。 これを「トラウマ性悲嘆」といいます。トラウマ性悲嘆とは、以下のような状態を指します。 ・故人の死を受容できない、あるいは受容したくない。 ・故人を思い出すものや場所が引き金となり、強い苦痛が生じるため、悲嘆の過程が進まない。 ・故人への過剰な同一化 、過剰な責任感、罪悪感や怒り、復讐の感情などから、新たな生活に踏み出しにくくなる。 ・通常はなぐさめとなるもの(写真、故人とともに過ごした場所など)が、恐ろしいイメージや混乱した考え、感情につながっているため、肯定的な思い出にふれにくく、回避する。 ・死や、故人に関係する自分についての否定的な感情にふれることができず、考えを深めることができない。 (参考/兵庫県こころのケアセンター訳「子どもの心的外傷性悲嘆のためのガイド」2015.1) また、保護者の死は、家計に不安が生じる、養育者がひんぱんに変わる、転居や転校することになるなど、子どもの生活に大きな変化をもたらすことがあります。それが、二次的な困難をもたらし、場合によってはトラウマ的な状況をつくりだすこともある点に注意が必要です。 悲嘆からの回復には、半年~1年ほどかかることもまれではありません。トラウマがともなえば、回復の過程そのものが止まりやすくなります。ですから、故人の死を受け入れるよりもトラウマから回復することが先決です。 それには周囲が適切に支えながら、子どもが自己コントロール感をもてるようにすること。場合によっては、医療機関やカウンセリング機関などでの、トラウマに焦点を当てた治療が必要になることもあります。