災害や大切な人との死別、子ども同士や先生からのいじめ……トラウマをもつ子どもをさらに打ちのめす出来事
友だちとトラブルばかり起こしている、大人に対して反抗的、拒食や過食……。こうした「困った子」は、実は本人が困っている子です。過酷な体験で生じた心の傷=「トラウマ」から、問題行動を起こしているのかもしれません。 【漫画】「悪魔の子の証だよ!」新興宗教にハマった母親が娘に言い放った信じ難い一言 わかりにくいのは、なにがあったかを子ども自ら話すことが少ないからです。トラウマは、先の人生に大きな影響を及ぼすことさえあります。ですから周囲は、子どもの回復のためになにができるかを考え、行動していくことが必要です。 そこでこの連載では、『子どものトラウマがよくわかる本』(白川美也子監修、講談社刊)を基にして、当事者はもちろん、子どもにかかわるすべての支援者にも知っておいてほしいことを、全8回にわたってお伝えします。 支援者が子どもや家族をコントロールするのではなく、双方が力を与え合い、この世に生きている幸せを共に感じられる。そんな瞬間を増やすのに役立つヒントをぜひ見つけてください。今回は、虐待以外で子どものトラウマになりうる体験について解説します。 子どものトラウマがよくわかる 第6回 〈暴力だけじゃない。子どもへの虐待4つの類型と、その見分け方〉より続く
災害は、トラウマをかかえる子どもに深刻な影響を与える
大きな災害や事故はトラウマになりうる出来事です。 一般的には、うつ状態、不安、怒り、自分が無事だったことへの罪悪感、睡眠障害、頭痛・だるさ・のどのしこり・食欲不振など各種の身体症状、集中困難、思考力低下などのストレス反応が起こります。 低年齢の子どもでは、赤ちゃん返りや保護者へのつきまとい、遊びのなかでの再現、少し大きくなると、自責感や、はりきりすぎ、青年期には孤立感や反抗的な態度を示すことも。しかし、大半の子どもは徐々に落ち着きを取り戻します。 一方で、なかなか回復せず、行動上の問題が残り続ける子どももいます。そうした子どもの特徴として、被災前からなんらかのトラウマをかかえていたことや、現在の環境で十分な安心が得られていないことがあげられます。 災害・事故の場面に触れたことで、過去に受けた被害体験の記憶がよみがえりやすくなることもあります。また、ストレスの多い被災後の生活のなかで、もともとあった家庭の問題が顕在化し、虐待やDVの増加など、新たなトラウマ的状況が生まれやすくなるおそれもあります。 災害そのものによるトラウマなのか、災害ストレスによる過去のトラウマの現れなのかを見極めることで、よりよい支援ができます。また、子どものそばに安定した落ち着きのある大人がいることで、子どもの自然な回復が促されます。保護者や支援者のおこなう「心の応急手当」が、トラウマ化を防ぐ鍵になるのです。