人間中心のAIと別解をつくる「生活者インターフェース市場フォーラム2024」から考える未来の日常
ポストAI時代のコミュニケーションの在り方
最後となるSESSION 4では、「人類はAIを愛せるか?」をテーマに、Aww 代表取締役 守屋貴行(以下、守屋)、Preferred Networks プロダクト・サービス担当VP 兼 ビジネス戦略担当VP 福田昌昭(以下、福田)、ファシリテーターにTBWA HAKUHODO Chief Creative Officer 細田高広(以下、細田)が登壇。 細田は冒頭で「生活者と企業の間にAIがエージェントとして存在する。そういう時代が自然と始まっている」と話し、セッションがスタート。「AIはインターフェースをどう変えるのか」を大テーマに、前半はAIエージェントの日常化や人類とAIの共進化などについて議論がなされた。 日本初のバーチャルヒューマンimmaを生み出した守屋は「日本はAI大国としての土壌がある」と示した。 「24年5月、史上初のバーチャルIPとしてimmaがカナダで行われたTEDトークに出演させていただいた。その際、過去最大くらい『AIは敵だ』といった内容でコメントが荒れた。一方、日本ではこうした現象は起きない。それは、日本でドラえもんや鉄腕アトムのような存在が親しまれている文化的背景があるからではと考えることができる。対するアメリカなどの海外ではターミネーターなど敵として表現されてきた。そこから可能性を探ると、日本はAIを受け入れる土壌がすでにあると思っている」(守屋) ドラえもんのようなAIエージェントが日常となることを仮定すると、「AIに人と同じ感情を抱けるか?」という問いが出てくる。 この問いに、AI向けの半導体から基盤モデル、プロダクトサービスなどを手がける福田は「難しい問ではあるが、AIはあくまで道具として捉えている。人と同じような感情を抱くのは難しいのではないか」と述べた。一方、守屋は「immaをはじめとするバーチャルヒューマンに感情を抱いている人は実際に存在しているし、日本はIP大国でもある。特に日本ではキャラクターに感情を抱く人は多々いると思う」と語り、双方の異なる見解は、AIとどう向き合うのか、参加者が考えを巡らせるきっかけとなった。 後半のテーマは「AIとどのような生活者体験を創造できるか?」「AIで生活者を幸せにするためにできることは?」。 守屋は「IP×AI/1企業1IP時代」を示し、AI時代において企業と消費者の接点となり得るIPの可能性について言及。コンテンツを自社で制作することが主流になり、1企業1IP時代が来た際には、AI大国としての土壌がある日本はもっと強くなるだろうと語った。 また福田はAIで生活者を幸せにするには「新しい技術をどうお客様に利用していただくのか、そして従業員のための雇用をどう変化させていくのかという問いが必要になる。ここを経営者やリーダーは考えていくことが重要」と話した。 最後に細田は、「AIは人間を学ぶ。AIから人間を学ぶ」というメッセージのもと、「AIが人間を学ぶ姿を見ることで、私たちは人間らしさや人間を高める方法を学んでいく。このサイクルを回しながら生活者が幸せになる体験をつくっていけたら」と話し、データ、デジタル、AIが向かう先は「HUMANIZATION」なのかもしれないと思いを述べた。 本フォーラムでは来場者への事前アンケートをもとに「10年後の“なりたい”じぶん」と対話ができる生成AIアバター体験も提供された。 筆者が「10年前には想像できていなかったことって、どんなこと?」と尋ねると、そこには本イベントで交わされた未来があった。 AIが相棒となる。その未来は、それほど遠くはなさそうだ。
Forbes JAPAN 編集部