人間中心のAIと別解をつくる「生活者インターフェース市場フォーラム2024」から考える未来の日常
2024年11月25日、博報堂が主催する次世代インターネット空間について生活者視点で考える「生活者インターフェース市場フォーラム2024」が東京都で開催された。テーマは「AIと、この世界に別解を。- Human-Centered AI -」。各界の有識者やAI関連の研究者、経営者などが登壇し「AIネイティブ時代」における生活者とAIの関係、企業の組織づくり、効率性を超えた創造性の先に訪れる変化と進化についてトークセッションが行われた。 本フォーラムはSESSION 1~4までの4部構成で実施。SESSION 1では博報堂 代表取締役社長 水島正幸(以下、水島)と博報堂DYホールディングス執行役員 Chief AI Officer 森正弥(以下、森)が登壇し、本フォーラムを通じて「AIとともにつくる未来について探っていきたい」と語った。 水島は「我々はAIをともに問いを立てるパートナーとして捉えている。問いを立てるとは新たな課題を発見することである」と述べ、その下地となる生活者インターフェース市場について解説。デジタルテクノロジーの進化によりあらゆるモノや場が生活者とインターネットでつながる「生活者インターフェース市場」と、AIとの掛け合わせで生まれる新たなサービスの可能性に触れた。 同社初のChief AI Officerであり、2024年4月に新設された、人間中心のAI技術の研究および実践を行う先端研究組織「Human-Centered AI Institute」の代表でもある森は、AIの現在地について「生成AIの実現により『情報×AI』の時代から『クリエイティビティ×AI』の時代へ移行する過渡期である」と分析。「AIは人間の創造性を拡張させるものへと変化する」と話し、新しい価値創造の源泉になり得ることを示唆した。 ◾️AIの活用は自分との対話 SESSION 2では、主人公が日常的に生成AIを使う姿を描いた『東京都同情塔』の作家で芥川賞を受賞した九段理江(以下、九段)、AI研究者 今井翔太(以下、今井)、関西学院大学社会学部教授 鈴木謙介(以下、鈴木)と、ファシリテーターとして博報堂 ミライの事業室長 エグゼクティブクリエイティブディレクター 吉澤 到(以下、吉澤)が登壇。「AIは人間らしさをどう変えるのか?」をテーマにディスカッションが行われた。 筋トレが趣味という九段はAIを「ダンベルのような存在」と表現。「器具を手にしても体幹が鍛えられていなければ、効果を十分に得ることはできない」という独自の視点から、プロンプトを出す人間側の思考を鍛えることが大切だと指摘した。 九段は小説家として、これまで創造されていない未発見のもの、予測不可能なものを考えていきたいとし、そのヒントを得るためにAIを活用している。このプロセスのなかでAIの回答に違和感を覚え、「なぜ違和感を感じるのか」と自身との対話を繰り返し、AIは完全な他者ではなく自分との対話だと気付いたという。 「AIと100年人生」というテーマでは、今井はさまざまな議論があることを前提に、「過去から現在まで、寿命は伸び続けている。だが現在は人間の頭脳で発見できる科学の限界に来ている。それを突破できるのが人工知能だ」と、AIの可能性について言及。 これを受け、鈴木は「AIの活用で飛躍的に医学が発展した場合、有限性があるからこその人間の営みや関係性も再定義されるのでは」と新たな問いを立てた。