コロナ対策、なんでこうなった? 感染拡大1年、識者が感じた「6つの疑問」
1年前、新型コロナウイルス感染症が日本でここまで拡がり、私たちの生活や経済に甚大なダメージを与えると予見できた人は少ないだろう。2度目の緊急事態宣言により感染者数は下がっているものの、依然、予断を許さない状況だ。ただ、行政の危機管理として「想定外」は言い訳にならない。改めてこの1年間を振り返り、コロナ対策の課題を整理するとともに、行政学の観点から筆者が感じる“6つの疑問”を提示したい。(中央大名誉教授・佐々木信夫)
【疑問1】 なぜコロナ対策と経財再生が、同一大臣なの?
第1の疑問は、経済再生担当の西村康稔(やすとし)氏がコロナ感染症担当を兼務していることだ。経済の再生、財政健全化の旗振り役が本務の西村氏にとって経済活動を活発化させること(アクセル)と感染拡大を抑制すること(ブレーキ)は本来相容れないものだ。アクセルとブレーキを同時に踏み続けることは混乱を生んでいる。 昨年秋、官房長官時代からGo To事業に熱心だった菅義偉氏が総理になった。経済再生担当がその成果を問われるだけあって、コロナ対策より経済対策に軸足を移した。 だが再びコロナ感染拡大が広まると、今度は一連のGo To事業を止め、感染症対策に走る。どちらがホンネでどちらがタテマエなのか、二重人格のような立場に西村氏は置かれた。本来感染症対策のポストを増設するなら与党に幾人もいる医師出身者から大臣を選び、厚労省、医師会、医療機関と緊密な連絡を取りながら対策に当たるべきだった。しかし経産官僚上がりで経済再生担当として任命されている西村氏がコロナ禍対応を迫られることになり、ブレーキとアクセルを同時に踏むようなことになった。 これが人事面からみたコロナ対策の問題点だ。
【疑問2】 権限・責任があるのは政府? 知事?
コロナ対策は都道府県知事を現場責任者としている。一方で、緊急事態宣言を出す際に政府が定めるガイドラインともいえる「基本的対処方針」には、「(都道府県は)政府と連携し」などと書かれている。箸の上げ下げまで政府が指示するような形になり、結果として国と地方の役割分担が不明確になった。 歴史を振り返れば、確かに、政府と都道府県(知事)が明確に上下関係にあった時期はある。戦前は国の総合出先機関であり知事は内務省官僚を派遣していた。戦後は公選知事制に変わったものの、2000年春までは都道府県業務の8割が各中央省庁からくる委任事務の処理だったし、知事は各省・大臣の地方機関(部下)だった。 その仕組みは2000年の地方分権一括法の施行で全廃され、国と地方は役割の異なる“対等の関係”に変わった。にもかかわらず、今回の一連の対応では地方分権の理念を忘れたかのように、政府は部下のように知事たちを操っている。 対コロナ政策の権限・責任は政府にあるのか、知事にあるのか。さらに、政府の中でも責任者は西村氏なのか、ワクチン担当の河野太郎氏なのか、医療行政を統括する厚生労働省を束ねる田村憲久氏なのか、分からない。