コロナ対策、なんでこうなった? 感染拡大1年、識者が感じた「6つの疑問」
【疑問3】 現場指揮、なぜ政令市長でなく知事?
感染者の8割近くは政令市、中核市、特別区という大都市、中都市地域で出ている。にもかかわらず、その中心自治体である政令市、中核市、特別区の出番がほとんどない。これも疑問だ。 都道府県業務の権限の多くは既に政令市や中核市へ移っており、保健所も全て移管されている。コロナ対策でPCR検査が必要かどうかまず保健所が判断する仕組みにあり、感染者数も保健所が把握している。対して、都道府県は間接データしか持ち得ていない。 現在全国に政令市が20、中核市が60、特別区が23あり、これで国民全体の50%をカバーしている。そして、この区域で約8割の感染者が出ている。中2階自治体ともいえる都道府県ではなく、政令市ら大都市、中都市が中心となって感染対策を打たない限り、“かゆい所に手が届く”はずがない。 政府は47都道府県を軸に対策を進めるのではなく、財政措置を含め政令市、中核市、特別区長らが感染対策の主軸となるよう法改正をすべきではないか。
【疑問4】 対策は都道府県単位でなく、広域圏では?
私たちの経済活動も日常生活も都道府県単位ではなく県境をまたいだ広域圏の中で行われている。にもかかわらず、コロナ対策に奔走する知事らは「わが県に来ないで下さい」「わが県を出ないで下さい!」と叫び続けた。 47の府県割はいまから150年前、明治4年(1871年)の廃藩置県でできた区割りに過ぎない。馬、船、徒歩が交通手段であった時代のモノ。いまや生活圏、経済圏は交通・情報・通信手段の飛躍的発達で大きく拡がっており、経済圏・生活圏と行政圏(都道府県割)は一致していないのだ。 今回のコロナ対策で、最近ようやく国も「京阪神」「首都圏」という言い方で広域圏を対象にした判断を求めるようになった。知事も京阪神3府県とか首都圏4都県で足並みをそろえる動きになってきたが。もはや感染症対策は都道府県が各々単体で対応できるものではないことを示唆している。
【疑問5】 コロナ対策、カネは誰が管理しているの?
コロナ対策で国も地方も予算規模は空前の大きさに膨らんでいるが、いったい誰が管理しているのか。カネは天から降っては来ない。歳出の前提に歳入がある。その歳入は誰が管理しているのか。足りない分を借金(国債)で埋め続けているが、そのデットライン(限界)はどこなのか。 しかも福祉も教育も土木も一色端にしている「一般会計」で扱われており、コロナ対策にどれだけ使われ、その返済にどのような道筋があるのか、全く知らされていない。 例えば、昨年5月頃、国民1人に10万円ずつ配られ、計12.8兆円が使われた。その部分だけに限定しても、10年前の東日本大震災で発行された復興債11.6兆円を上回る。この復興債は、私たちの所得税を均等割りで2.1%上乗せされ、25年間続けて返済し続けることで返済することになっている。 この復興債方式が今回も用いられるとすると、あと15年は復興債分2.1%、25年はコロナ債分2.4%が上乗せされ続ける。もちろん、これは割り勘に近い所得税の上乗せ増税の話であって、他の赤字は消費税等の増税で回収する方途しかないのではないか。 緊急事態にカネを使うことに反対はしない。しかし、それは「一般会計」ではなく、独立した「特別会計」として扱い、国民に全容と使途が分かるように示す必要がある。