コロナ対策、なんでこうなった? 感染拡大1年、識者が感じた「6つの疑問」
【疑問6】 野生動物は誰が担当?
世界保健機関(WHO)調査団が中国・武漢市を調べ、2月10日に発生源は野生動物から人間に移った可能性が高いことを明らかにした。野生のヘビはコウモリを餌にする。武漢市の海産物市場ではヘビも販売されていたことから、コウモリからヘビに感染した新型コロナウイルスが人へと広がり、今回の流行を引き起こした可能性が高くなったというのだ。 では、日本の野生動物対応は誰が担っているのか。日本獣医師会の幹部から話を聞いたところ、「人間の病気は医師が診る、家畜の病気は獣医師が診る、しかし野生動物は誰も診ない」と危惧していた。専門家がおらずエアーポケット(空白)になっているのだ。 所管する省庁を見ても、医師は厚労省、獣医師は農水省だが、野生動物は保護の視点で環境省だが、害を及ぼす話になると担当省庁はない。野生動物を専門に扱う医師的な資格制度もない。 都市部への人口集中により山間部の過疎化、高齢化が進む中、日本の山は野生動物の楽園になっている。野生動物には「楽園」であっても、農作物を食い荒す被害の急増は農家にとっては極めて深刻で厄介な問題。しかも、感染症の発生源ともなり得るのだとすると、いつ「日本発の感染症」がまん延してもおかしくないというのである。 農水省も鳥獣対策室などが自治体の支援をしているが十分とは言えない。野生動物医学部の創設を含め、環境省などに新たな取り組みを望みたい。 ――世界的に甚大な影響を与えている新型コロナウイルス。しかし、国、自治体とも「想定外」を常套句にしてならない。嵐が過ぎれば式ではなく、科学的にしっかり今後の対策を練るべきだ。