外務省がアフリカで行った衝撃の“証拠隠滅”騒動 「旧統一教会の痕跡を消し去れ!」
なんの非もないセネガル人を追い詰め……
そうなると、やれることはひとつしかない。「JAMOO2」がこれ以上、共産党に国会で批判されないよう、女性連合の痕跡をすべて消し去ること。すなわち、「隠蔽」である。 それが冒頭で述べたロゴの削除、電話番号や書類の変更、そして長年ここで女性たちを指導していた教師の「追放」だ。実はこの教師は現地の女性連合の会長を務める人物なのだ。 これによって外務省は、“岸田首相攻撃”に動こうとする共産党に対して、こんなふうに「論破」ができる。 「確かに校長は信者のようですが、だからといって、彼女が運営する学校まで旧統一教会関連の施設だという動かぬ証拠でもあるんですか?」 そんなものはあるわけがない。現地で課長がすべてもみ消したのだから。 外務省がよその国の民間人に「圧力」をかけてまで、自らの体裁を、いや、岸田首相の立場を守るために、乱暴で稚拙な“つじつま合わせ”を行ったことは問題にされるべきであろう。 突然、日本からやってきた外務省課長に「証拠隠滅」を指示されたディオプ氏は、そのショックと学校を失うかもしれないという恐怖から、しばらく体調を崩していたという。なんの非もないセネガル人をここまで追い詰めることが、日本の国際支援なのか。
「お答えを差し控えます」
外務省に問い合わせたところ、「本件につきましては、大使館や本省出張を通じて、適切にフォローアップしていますが、その具体的態様については、お答えを差し控えます」と回答するのみだった。 官僚が隠蔽工作に走るといえば、森友加計問題の財務省の公文書改ざんを思い出す。あの時は首相を守るための財務省幹部の答弁に合わせる形で、近畿財務局の課長らが公文書の改ざんを指示された。それによって結果的に自殺者まで出た。今回もやっていることの本質はそれほど変わらない。 岸田首相からすれば旧統一教会への解散命令請求も、「国民を裏切ることがないよう、信念を持って臨んだ」ということなのだろう。ただ、今回のような「隠蔽体質」を知ればやはり「保身からのトカゲの尻尾切り」を疑ってしまう。自身にとっても、自民党にとっても都合の悪い事実を握るこの団体を消し去ることで「証拠隠滅」を図っているのではないのか。 岸田首相は退任するが、この政権が裏で何をしてきたのかという検証は始まったばかりだ。 窪田順生(くぼたまさき) ノンフィクション・ライター。1974年生まれ。雑誌や新聞の記者を経てフリーランスのノンフィクション・ライターに。事件や世相などを幅広く取材。『14階段―検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。その他に、『死体の経済学』『スピンドクター“モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』などの著書がある。 「週刊新潮」2024年8月29日号 掲載
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