がん患者の家族が知っておくべき“心構え”とは? 診断時の受け止め方や注意点を医師が伝授
がんになった家族のサポート、頼れる人はいる?
編集部: 支える側も不安になってしまいます。 平山先生: そうですね。「家族は第2の患者」という言葉もあるくらい、大切なご家族の病気に伴う心理的苦痛は、患者さん本人と同じくらいか、それ以上と言われています。ご家族は「一番つらいのは本人だから」と自分自身の思いや感情を心の中にしまい込みがちなため、ご家族も心身ともに大きなストレスを抱えやすくなり、心身に不調をきたしてしまうことも少なくありません。 編集部: そんなときは、どのように対処したらいいですか? 平山先生: がん患者さんのご家族を対象にした「家族ケア外来」や「家族相談」といった専門機関に相談することをおすすめします。気持ちの整理をお手伝いしたり、困りごとに対して一緒に解決策を考えたりすることで、つらさを和らげて患者さんに寄り添いながら自分らしい日々を過ごせるようサポートしてくれます。 編集部: 専門機関があるのですね。 平山先生: 「がん治療で家族が大変な時期に、自分が病院に行くなんて」「自分のことは後回しでいい」と、自分自身をケアすることに抵抗を感じたり、後ろめたい気持ちになったりする人もいるかもしれません。しかし、患者さん本人を継続的にサポートするためにも、ご家族自身の心の状態をケアすることは大切です。ご家族それぞれが、自分をケアしてより良い状態でいることが、患者さん自身のケアにもつながります。 編集部: 具体的に、どのようなことをするのですか? 平山先生: まずは、心のつらさや心配事、患者さん本人には相談しにくいことなどを伺い、それぞれの希望に沿った方針を決めていきます。治療方法としては、主にカウンセリングと薬物療法があります。特に看病や通院の付き添いなどで、疲労や睡眠不足が続くと、心身に様々な不調が生じやすくなるので、そうした場合には適切な薬を処方してサポートしていきます。
サポートする側の心にも気遣いを
編集部: 患者さんをサポートする上で、自分自身に対して気をつけることはありますか? 平山先生: 患者さんのことを大切に思う気持ちと同じように、ご自身のことも大切にしてほしいと思います。患者さんをサポートするためには、ご自身の心身が満たされていることが重要です。患者さんをサポートしている間もご自身がリラックスしたり楽しんだり、休息できる時間を持つことを心がけてみましょう。 編集部: それでもつらいときは、どうしたらいいでしょうか? 平山先生: 2つの対処法があります。1つは「人に話す」のが大事です。専門用語で「カタルシス効果」と言うのですが、専門家でなくても、身近な知人などにご自身の思いを言葉で外に出すことによって、不安やつらさなどを軽減することができます。もう1つは、「自分のやりがいや生きがいにつながる行動をする」ということです。ご家族をサポートするために、仕事や趣味などを中断してしまう人もいますが、そうすると却ってつらさが増してしまうこともあります。ぜひ仕事や趣味などは続けていただきたいと思います。繰り返しになりますが、ご自身が楽しんだりリラックスしたりして休息することは、最終的に患者さんのためになります。決して後ろめたい気持ちになる必要はありません。 編集部: どのくらい気分の落ち込みが続いたら受診すべきですか? 平山先生: 気分の落ち込みや不眠など心身の不調が2週間以上続いている場合は、一度受診することをおすすめします。ただし、明らかに重度な不調が急に出た場合や、生活に支障が出ている場合は、2週間未満でも早めに受診しましょう。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 平山先生: ご家族が病気になると、つい自分自身をないがしろにしてしまいがちですが、ご自身が身体的・精神的につぶれてしまっては本末転倒です。心身の健康を保つためにも、ぜひご自身の楽しみややりがい、生きがいを大切にしてください。つらくなってしまったときは、家族ケア外来や家族相談といった専門機関もあるので、1人で抱え込まずにぜひ活用してみてください。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]