サントリーモルツのCM「うまいんだな、これがっ」はなぜ凄いのか?「心を揺さぶる文章」で最も大事なこと
そんなとき「史上最低の遊園地」など、「としまえん」の広告で名を馳せていた岡田直也さんが教える講義がありました。そこで出されたお題が、「東京人を大阪に呼ぶためのキャッチコピー」でした。100本提出せよとのことで、100本、なんとか捻り出しました。 ● 広告のために頑張ったことが 広告オタクとして敬遠された アウェーで戦ってみませんか? 受講生120人×100本=1万2000分の1。その1位に、この僕の書いたコピーが選ばれました。その講師を務めた岡田さんは、「キャッチコピーは、商品と自分の関係性のなかで紡がれるもの」だと教えてくれました。 僕がこのコピーを書けたのは、あの辛かった2ちゃんねる事件があったからかもしれない。逆境をアウェーでの試合のように捉えて、前向きに戦ってみよう。そう思えた感覚が、「東京人を大阪に呼ぶ」という課題にシンクロしたのだと思います。 こうしてようやく1本の「金の鉛筆」を手に入れたことで、「自分はコピーライターを目指し続けよう」と思えたのです。
今振り返っても、もしも講座でただの1本のコピーも評価されなかったとしたら、僕はコピーライターの道を諦めていたかもしれません。 ちなみにその後、本格的に就活が始まってからは、いくつかの広告の会社のインターンを受けました。なのに、本番の就活――。意外なほどに、落ちる、落ちる。 広告のために頑張ったことが、広告オタクとして敬遠されたのです。そしてなぜか、運よく第一志望だった電通の面接だけはうまく楽しく話せたのです。だから受かったときは、涙が出るほど嬉しかったことを覚えています。 そう考えるとあの日の苦しい状況が、コピーを書かせてくれたともいえそうです。良いことも悪いことも、すべて運命のめぐり合わせに感謝してもしきれません。 こうしてみると自分の人生はあの頃に書いた「東京人を大阪に呼ぶコピー」を体現しているようなものです。「アウェーで戦ってみませんか?」の言葉の通り、常にアウェーを感じる環境に挑戦してきた人生だといえるかもしれません。偶然であっても、その言葉は自分の生き方を表現するものだ、といえることもあるのです。
堤 藤成