ミドル級”最強”ゴロフキンが2日後に迫った村田諒太との”世紀の一戦”を前に公約した「見応えある試合」の意味を紐解く
ーー村田選手がプレスをかけて前に出る展開が予想されますが、どう対処しますか。逆にゴロフキン選手からプレッシャーをかけていきますか。 戦術面を問う質問に対して、ゴロフキンは、こう答えた。 「現時点でどういう試合展開になるかを予測することはできません。2人とも試合が始まってからの対応は複数パターンを用意してきていると思います。一つだけ約束できるのは、見応えある試合になるということです」 「見応えある試合」とは何なのか。村田の真っ向勝負を受けて立つということなのか。 村田がガードを固めて突進してきても、そこにジャブ、外から独特の角度で打つ”ゴロフキンフック”を浴びせて、決して懐に入れず、逆に返り討ちにしようとでも考えているのか。 2013年3月にモナコで絶頂期のゴロフキンと対戦し、3回TKOで敗れた元WBA世界スーパーウェルター級暫定王者の石田順裕(現在寝屋川石田ボクシングクラブ会長)はゴロフキンの怖さを知る人物の1人。上背とリーチでは、石田が上回っていたが、3ラウンドにアッパーをスウエーでかわしたところに右フックの”直撃弾”を浴び、ロープの間からエプロンまでぶっとばされてTKO負けを喫した。 「パンチが一切見えなかったんです。記憶が飛び、何が起きたかわからなかった。気がついたら、なぜ試合が終わったかを理解できず“なんで止めんねん”とレフェリーに文句を言っていました」 石田はゴロフキン対策をこう立てていた。 「ボクシングをしたら勝ち目がない。リングの中央でこちらからプレッシャーをかけて、頭をくっつけた接近戦でぐっちゃぐっちゃの泥試合に持ち込もうと」 実際、1ラウンドから石田は足を止めてリングの中央で対峙した。 「でも、その気持ちがはやった分、上体が前へいき、顔も少し前へ出てしまって、そこにジャブを打たれました。パンチは岩みたいに硬い。クリンチに引き込もうと何回か試みましたが、体の力が驚くほど強くて簡単に突き放されるんです。下がりながらでも、とにかく空いた場所をみつけて、いろんな角度から強く正確なパンチを打ってくる。こちらが下がってしまうと手がつけられない。最後はワンパンチをもらいましたが、2ラウンドだけでダメージが溜まっていました」 だが、あれから9年が経過した。ゴロフキンは明日8日に40歳の誕生日を迎える。 石田は、村田が勝つための条件は2つあると見ている。 「多くの人が語っていますが、ゴロフキン対策は前に出ることとボディ攻撃ですよ。カネロ2で弱点をさらけだしましたよね。カネロにプレッシャーをかけられ、ボディを打たれて効いていました。カネロ2では、下がらされるゴロフキンを初めて見ました。そりゃ今なおとてつもなく強いことは確かでしょうが、僕とやった9年前のゴロフキンに比べると、やはり衰え消耗はあると思います。僕は泥試合にできなかったんですが、村田のパワーと体の頑丈さがあればできるんじゃないですか。彼がスーパースターになる瞬間を見てみたい」