消費者目線の“景気ウオッチャー調査”は悪天候や地政学リスクをどう見る?
内閣府が発表した8月の景気ウォッチャー調査によると、景気の現状判断DIは49.7と、7月から横ばいも、悪化を見込んでいた市場予想(49.5)は上回りました。また景気の先行き判断DIは51.1と7月から0.8ポイント改善、こちらも市場予想(50.1)を上回っています。(解説:第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
GDPにも連動する「景気ウオッチャー」調査とは? どんなことがわかるの?
この指標はスーパー・コンビニ・家電量販店などの小売業、飲食店、タクシードライバーなど消費者に近い立場でビジネスをしている人を中心に景気に敏感な2050人を選定し、景気の現状と先行きをアンケート形式で回答してもらい、それを数値化するというシンプルなものです。公表が始まった2000年頃は「タクシードライバーに景気を聞いて何がわかるんだ?!」という批判もあったそうですが、以下に示すとおり、今や日本経済を把握するうえで、速報性と精度の高さを兼ね備えた数少ない指標になっています。 8月の実績に目を向けると、現状判断DIは長雨の影響もあって頭打ちとなったものの、先行き判断DIは上昇基調にあり、総じてみれば景況感は改善傾向にあると判断されます。
この指標は景気の総括的な判断に加えて「家計関連動向」、「企業動向関連」、「雇用関連」という3つの内訳が公表されています。項目別では、個人消費の先行指標として有用な「家計動向関連」は現状判断が低下した反面、先行き判断が改善しました。消費者に近い立場にいるウォッチャー(調査対象者)は長雨の悪影響を一時的現象と判断している模様で、消費の見通しには楽観的なようです。 次に生産活動の先行指標として有用な「企業動向関連」は現状判断、先行き判断が共に改善しました。これはほかの指標(Markit社発表の製造業PMI、経済産業省発表の製造工業生産予測指数)で示された増産計画を上書きする内容で好印象です。特に製造業ではその強さが目立ち、先行き判断DIは消費増税直前の水準に回帰しています。最後に「雇用関連」を向けると、こちらは目下の人手不足によって高水準が持続しており、今後も同水準での推移が見込まれます。