英国政府が「ZEV義務化」を見直しへ エンジン車メーカーに救いの手? 1月までに決定
EV販売の義務付け、メーカー反発を受け再検討
英国政府は26日、自動車メーカーからの反発を受けて、国内で導入しているゼロ・エミッション車(ZEV)義務化について見直す方針であることを明らかにした。 【写真】英国で販売されている日本の「最新EV」【日産アリアとトヨタbZ4Xを写真で見る】 (42枚) ビジネス・貿易担当のジョナサン・レイノルズ大臣は声明で、前政権から「受け継いだ」現行の法律が「現在どのように機能しているか」について「懸念している」と述べた。 今後、英国政府は自動車メーカーと協議し、「より良い方向性への選択肢」を見つける予定である。レイノルズ大臣は見直しの具体的な内容については言及しなかったが、2030年までに新車の内燃エンジン車の販売を禁止するという方針は維持されることを確認した。 同大臣は「我々は事態の深刻さと緊急性を理解している」として、1月までに決定を下すと述べた。 「皆さんが確実性を求めていることは承知している。だからこそ、協議を早急に進め、今後の方向性を明確にし、1月の決定までに必要な回答を皆さんが得られるよう保証する」 大臣はさらに、「EVが英国で生産されるよう、あらゆる手段を講じたい。英国におけるEVの未来は、決してネガティブなものではなく、そうであってはならない。素晴らしい製品によってポジティブなものになるはずだ」と付け加えた。 現在、英国内で新車を販売する自動車メーカーはEV販売比率を22%に引き上げることを義務付けられている。この比率は毎年段階的に引き上げられ、2030年には80%となる。基準値を超えてエンジン車を販売した場合、当該車両1台ごとに高額の罰金が科せられる。 これはZEV義務化(ZEV Mandate)と呼ばれ、2024年より導入された。しかし、今年のEV販売は市場シェア18.5%にとどまる見通しである。 自動車メーカーは主に、EV購入や所有に対するインセンティブなど、政府からのサポートが不足していることを批判している。特に、EVへの関心が全般的に低迷している中、支援なしでは目標達成は不可能だとメーカーは主張する。 先週行われた自動車メーカー、業界団体、政府との協議では、ZEV義務化の見直しを求める声が強く上がった。政府は2030年のエンジン車販売禁止については譲歩しない構えだが、ZEV義務化の法改正については検討の余地を残した。 1月までに決定するという今回の報道を受け、英国フォードのマネージングディレクターであるリサ・ブランキン氏は次のように述べた。 「フォードは2035年までにゼロ・エミッション車100%を目指すという英国政府の目標に賛同するが、現在の市場の課題によりVETS(車両排出量取引)制度は実行不可能となっている。我々は、この制度の早期見直しを示唆する本日の報道を歓迎し、この重要な時期に政府が産業界の意見に耳を傾けてくれたことを喜んでいる」 「最終目標に疑問の余地はないが、現在のEVの需要は予想を下回り、義務付けられた軌道に沿っていない。フォードのような、新技術や先進製造に数十億ドルを投資してきたメーカーにとっては、この制度のさらなる柔軟化と、顧客の乗り換えを促す政府支援のインセンティブも必要だ」 英国の充電器事業者の代表団体であるチャージUKのCEO、ヴィッキー・リード氏は、この協議が「大いに必要とされていた明確化をもたらす」ことを喜ぶ一方で、EV販売台数目標の変更は「各方面が合意したEVシフトの最大の敵である不確実性を招くリスクがある」と指摘した。 また、ZEV義務化を再設定することは「愚か」であり、「EV充電インフラへの数十億ポンドの投資がリスクにさらされる」と懸念を示した。 ヴィッキー氏のコメントは、日産自動車の声明と対照的である。日産は英国政府との協議の後、ZEV義務化の見直しを進めなければ将来の「ビジネスケースを損なう」リスクがあると警告していた。 英国で7000人を雇用する日産は、政府目標を「時代遅れ」と評した。 日産の欧州部門トップであるギョーム・カルティエ氏は、「このままでは英国での自動車製造のビジネスケースや、何千もの雇用と数十億ポンドの投資の実現性が損なわれる恐れがある」として、「早急の対策」を求めていた。
ウィル・リメル(執筆) 林汰久也(翻訳)