「ありがとうブス、バイバイ」 容姿いじりが敬遠される時代、武器を捨てた尼神インター・誠子
今の明るいイメージからは想像もつかないが、学生時代の誠子はひたすら卑屈で根暗だった。学校で男子としゃべることもなく、休みの日はずっと家に閉じこもっていた。唯一の楽しみは芸人のラジオを聴くことだった。 「クラスのお調子者がはしゃいでいるのを見て、いや、私の方が絶対面白いわ、とかひそかに思っているタイプでした。男芸人でそういう学生時代だった人はたまにいるんですけど、それの女バージョンってヤバいですよね(笑)。自分には笑いの才能があるはずだと思って一人でネタを書いたりしていました」 そんな彼女は、高3のときに初めて『M-1グランプリ』を見て、その面白さに衝撃を受けた。自分も芸人になりたいという夢が膨らみ、大学進学をせずに芸人になることを決めた。母親にその意志を告げたところ、彼女は答えた。 「ええやん! 芸人やったら、あんたのその見た目を生かせるやん!」 実の母親からのストレートな言葉に引っかかりを感じつつも、誠子は自分のやりたいことを認めてくれたことに感謝した。そしてお笑い養成所に入り、芸人としての道を歩み始めた。
お笑いだけが唯一の楽しみの根暗な女子高生だった彼女にとって、思い切って飛び込んだお笑いの世界は、天国のような場所だった。 「楽しかったですね。私がただ立ってるだけで先輩がいじってくれて、それがめっちゃウケるんですよ。自分でも人の役に立てるんや、人を笑顔にできるんや、って思って、それからは何でも来いっていう感じでした」 性格も考え方もがらりと変わった。お笑いの世界ではコンプレックスが武器になり、マイナスをプラスに変えられる。自然に笑顔も増え、「誠子の笑顔を見ると幸せな気持ちになれる」と評判になった。 「芸人になってからはずっと楽しいというのもありますし、笑ってた方がかわいく見えるんですよね。たとえ美人でも、ぶすっとしていたらかわいくないじゃないですか。私の昔の写真とか見たら、全然笑ってないんですよ。そりゃかわいくないわ、って思いました。あの当時もニコニコしていたら、もっと男子も話しかけてくれたと思うんですよね。結局は自分の問題やったんやな、って気付きました」