「温暖化した未来は、台風被害がひどくなる可能性」台風科学技術研究センター長の筆保弘徳教授に近年の台風の特徴を聞いた(前編)【台風3号最新情報】
2024年夏 猛暑が海をさらに暖める
7月21日現在、日本周辺は平年より海水温が高く、北海道や東北沖の太平洋は平年より6度も高くなっています。九州から関東周辺の海域では27度を超えている状況です。さらに沖縄・奄美周辺では海面水温が30度以上で、平年より約2度高くなっています。なお、台風は海面水温26.5度以上の海の上で発生するといわれています。 台風の発生や発達には、周辺の風がどう吹いているかなど地上や上空の気象条件も大きく関わってきます。海水温だけが決め手ではないものの、いまのように海の高温状態が続くなか台風が北上したならば、筆保教授は「令和元年房総半島台風や東日本台風と同じような特徴で、勢力の強い台風がなかなか衰退せず、やってくるのではないかと思います。」
予報精度が向上しても被災地が生まれてしまう台風災害
筆保教授は令和元年房総半島台風の被害調査に参加したとき、被災地の光景を目の当たりにして、研究者として大きな衝撃を受けたそうです。「僕は20年ほど前の学生のときに、台風の被害が起きた現場へ連れて行ってもらったことがあります。当時見た被災地の光景と、その20年後に見た房総半島台風の被害の様子が、ほとんど変わっていませんでした。」 気象庁の台風の予測精度は年々向上しており、人命を守るために上陸前に避難が呼びかけられたり、交通機関が1日前から電車を止めたり、いまではさまざまな対策が進められています。しかし、「我々の台風に対する防御力は、昔と比べてそこまで変わっていない気がします。守りたい建物や外にあるものは、そこまで強くなっていないです。わかりやすいのが、電柱です。突風で50m/sの風が吹くと、電柱は倒れてしまうことはわかっています。50m/sの風が吹いても、倒れないように何かしているかといえば、しているわけではないですよね。台風が来ないように、もう祈っているだけです。」と筆保教授は悔しさを滲ませます。
現代でも依然として、台風は人間にとって脅威である存在です。しかし、台風の脅威をなくして、2050年の未来には台風を“恵み”の存在に変えることを目指すプロジェクト「タイフーン・ショット計画」が始動しています。(インタビューの後半記事で、タイフーン・ショット計画について紹介します)