「温暖化した未来は、台風被害がひどくなる可能性」台風科学技術研究センター長の筆保弘徳教授に近年の台風の特徴を聞いた(前編)【台風3号最新情報】
台風災害はさらに激甚化か 台風発生数は減少?
台風は熱帯から亜熱帯の暖かい海の上で発生、発達します。なぜなら、海水温が高いところでは、より海から水蒸気が供給され、積乱雲が発達するためです。発達した積乱雲が集まり、まとまることで、台風は発達します。 海水温が上昇していることで、やはり避けて通れないのは地球温暖化の影響です。地球温暖化が進行した未来の台風は、どうなるのでしょうか?筆保教授はいいます。「多くの研究者がその謎に挑戦していて、まだ統一した答えが定まっていないところもありますが、台風の勢力が強くなっていくだろうと考えられています。そのメカニズムとして考えられているのは、やっぱり海面水温が高くなって、台風のエネルギーである水蒸気がたくさん蒸発しやすい。そうなると台風が強くなります。」 一方で、温暖化が進むと大気の状態が安定化するため、台風の発生数自体は少なくなるのではないかと考えられています。台風の発生数は少なくても、ひとたび台風が発生したら強い勢力に成長してしまう台風の割合が増える未来を、多くの研究者がイメージしています。
「いまのインフラは、温暖化した未来の台風対策ではありません」
温暖化した未来では、台風による被害がよりひどくなる可能性を、筆保教授は指摘します。 「いまのインフラは、いまの台風に合わせてつくっているので、温暖化した未来の台風対策ではありません。たとえば堤防やダムといった治水整備などは、これまでの基準を超えた台風がやってくるので、大きな被害が出てしまいます。1を基準の最大値として、川の水位が0.8や0.9だったらセーフですが、1から1.1でちょっとでも超えたら、一気に川から水が溢れて、堤防はその勢いで決壊してしまいます。50年前に“これくらいで大丈夫と”思って作られた治水整備などの基準を変えないといけない。しかし、それをするには何十兆円、何百兆円という額が使われないといけない。いまは、そのジレンマにあると思います。」 去年の猛暑や暖冬など気温の高さが影響して、平年よりかなり高めで経過している日本周辺の海面水温は、ここ最近の猛暑によってさらに“加熱”されています。