40歳で5歳の娘を連れてアメリカ留学 出版社から女性教授に 「人生に回り道はない」
人生に回り道はない
大学教員になるまでの多様な経歴を踏まえて、今井教授は「私は生粋の研究者ではないので、こんな取材を受けるのもちょっと肩身が狭いんです」と謙遜します。しかし、その経験こそが学生たちとの向き合い方に反映されています。 「真面目な学生たちは、大学受験や就職で人生が決まると考えてしまいがちです。でも、私はいろんな体験をしてきたからこそ、自信を持って『それは違う』とアドバイスできます。大学で学んだことについても、一つの専門だけでは現代の複雑な課題を解決することはできません。たくさんの情報を得て、統合することこそが大切で、それが課題と向き合う力を生むのです。自分の人生のことも、そんなふうに考えてほしいですね」 今井教授が学生たちに身に付けてほしいもの。それは単なる語学力や、今この瞬間に役立つだけの知識ではなく、複雑さに耐えうる思考力や、失敗した時にこそ求められるレジリエンシー(回復力)です。実社会の難題を扱っているのはこのためで、正解のない問いを考え続ける力を育ててほしいと思っています。卒業生からは「授業で取り組んだ課題をいまでもときどき思い出して、考えることがあります」と言われることがあるそうです。 最後に受験生や学生たちへのメッセージを聞きました。 「大学も就職先も、その小さなコミュニティーが世界のすべてではありません。会社やほかのだれかに任せるのではなく、自分の人生は自分自身でナビゲートするものです。学びたいと思ったらいつでも学べるし、18歳や22歳の決断が人生を決めるなんて思い詰めてしまったら損ですよ。人生に回り道はないのです」 <プロフィル> 今井章子(いまい・あきこ)/昭和女子大学グローバルビジネス学部長、同学部ビジネスデザイン学科教授、同大学現代ビジネス研究所長。横浜市立大学文理学部文科英文専攻卒、ハーバード大学ケネディ行政大学院行政学専攻修了(行政学修士)。英文出版社Japan Echo取締役編集部長、国際交流基金情報センター英文エディター、東京財団常務理事など、さまざまな職種を経験する。2016年10月に昭和女子大学グローバルビジネス学部ビジネスデザイン学科に着任。22年から同学部長兼現代ビジネス研究所長。日本の市民の協力で設立されたタンザニア・アルーシャ州の全寮制女子中学校を支援する一般社団法人「キリマンジャロの会」常務理事も務める。専門はサスティナビリティー、国際広報、リーダーシップ。 (文=鈴木絢子 写真=本人提供)
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