40歳で5歳の娘を連れてアメリカ留学 出版社から女性教授に 「人生に回り道はない」
首都圏の女子大としていち早く国際経営系の学部を設置したのが、昭和女子大学です。今井章子教授は同大グローバルビジネス学部で、学部設立当初から、開発や人権など政治学系の科目を教えています。大学卒業後に、さまざまな職を経て40歳でアメリカの大学院に留学し、大学教員への道を歩んだ今井教授。自身のことを「生粋の研究者ではない」と言います。その体験を踏まえて、受験生はもちろん、親世代も元気が出るメッセージを送ってくれました。(写真=本人提供) 【写真】リレハンメル五輪の会場に、続く長野五輪のPRのため駐在。通訳を担当しているところ
若者の仕事への姿勢に変化
昭和女子大学にグローバルビジネス学部が誕生したのは2013年のこと。開設当初から同学部で教えてきた今井教授は、学部設立の狙いをこう説明します。 「日本ではこれまで、女性はビジネスの世界でサポート役になることが多かったと思います。グローバルビジネス学部の目的は、そうした補助的な役割を超えて、経営や経済の中心人物になれる女性を育成することにあります。語学を習得してグローバル社会を理解し、複雑な現実を生き延びられる人になってほしいのです。そのために、私たちはさまざまな学びを提供してきました」 今井教授の授業では、グローバルビジネスと密接に関わる政治について、実例から深く学びます。例えば、世界的なコーヒーサプライチェーンの経営と、切っても切れない関係にある児童労働の問題について。あるいはクーデターを経て軍事政権となった国で、外資系通信企業はどう行動すべきかについて。具体的には、政府に従って通信の検閲をするのか、それとも人々の権利を守るのかといったことです。 グローバル系科目群の目玉となるのは、3・4年次に取り組む海外大学との合同授業です。 「共に学ぶのは、アメリカのコロラド大学やデンマークのビジネス系大学などの学生たちです。デンマークの学生たちは2週間来日するので実際に顔を合わせて、またコロラド大学の学生とは、オンラインと対面を組み合わせながら、社会課題をテーマにしたグループでのワークショップに取り組みます。日本人はシャイだと言われますが、この授業ではもじもじしていると取り残されてしまうので、英語力だけでなく、自分の意見を発信する力も鍛えられます」 世界のだれも答えを持たない問いに英語で取り組まなければならないため、学生からは「難しすぎる」という声も上がります。4カ月にわたる合同授業の中では、泣いてしまう学生や、仲間割れしてしまうグループも出るほどです。しかし、最後のアンケートでは、「本当にやってよかった」「後輩にも受講を勧めたい」という回答が並ぶそうです。今井教授は学生たちの熱意を強く感じています。 「Z世代と言われる最近の学生は、サスティナビリティーやグローバルな課題への関心が強くあります。学部設置時に掲げた『ビジネスの中心人材になろう』という目標も、今は改めて言う必要がなくなっているように思います。学生たちの母親は、キャリアを持ちながら家庭を運営する女性が増えた世代でしょう。ロールモデルを間近に見て育ったためか、働くことに肩ひじ張る感じもありません。仕事に対してスッと力の抜けた、ほどよい姿勢を持つ学生が増えている気がします」