「遊女が主人公のマンガ」に女性が惹かれるワケ。描かれる問題は現代に通ずるところも
お客さんの8~9割が女性。その理由とは?
――吉原は幕府公認の遊郭でしたが、私設のものも含めたら全国的にたくさんの遊郭があったのですよね。性労働をせざるをえなかった女性が日本全国にたくさんいたとわかると、もっと深く遊郭や遊女について知りたくなってきました。カストリ書房ではどんな本を見ることができるのでしょう? 渡辺:商売をしている以上、いわゆる商業出版で消費的な文脈で遊郭や遊女を扱った本も置いていますが、一方で、女性史や地域史や産業史の本も取り扱っています。遊郭が独立して存在したわけじゃなくて、産業や歴史といったさまざまな分野と地続きだったことが見えるラインナップを心がけています。 ――実際にお店を訪れる方の8~9割が女性とのことですが、どういったお客さんが来るのでしょう? 渡辺:書店を作る前からSNSで遊郭のことを発信すると、女性らしきアカウントの反応が多かったので、女性が遊郭や遊女に関心を持っていること自体はわかっていました。ですが、その理由は自分もまだ捉えきれていません。 来ていただいた方には「どういった本を探していますか?」とお声がけすることはありますが、「自分はこういったことに関心があります」って言語化される人はごくごく一部です。多くの方は、ぼんやりとした興味で来てくれているようです。 ただ、女性と男性でははっきりとした違いがあって、男性の場合、ここには性的に消費できるものがあるはずと思って来られている方が一定数いらっしゃるように感じます。そういった方は、本を少しめくってみて落胆した雰囲気で帰っていかれます。対して女性は「遊女の心情を知ってみたい」とか「遊女の書いた手記や日記のような本はありませんか」とおっしゃることが多いように感じます。 私が思うにその理由は大きくふたつあると思っていて、ひとつは、今はスマホで何でも調べられる一方でノイズも多くなりすぎていて、遊郭で検索すると広告やまとめサイトが上の方に出てきてしまう。一定以上の深い情報を掴みにくい状態になってきているので、書店まで足を運んでくれるのだと思います。第二には、やっぱり同性だからこそ、どんな生き方をしてきたのか関心があるのだと思うんですよね。 カストリ書房に来る方のほとんどはいわゆる初心者で、遊郭という言葉を知り始めたくらいの方の方がとても多いように感じます。なので、気軽に訪れてみてください。 <取材・文・撮影/岸澤美希>
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