先行するテスラ、中国新興自動車メーカーに日本、ドイツはどう立ち向かうのか。次世代モビリティの重要キーワード『SDV』とは?
自動車の電動化が進む中で、「SDV(Software Defined Vehicle)」という新たな概念が世の中を賑わせている。直訳すれば、“ソフトウェアによって定義されるクルマ”を意味し、具体的には通信によって車載ソフトを更新することで、機能を増やしたり、性能を高めたりできるクルマのことを指す。ここではそのSDVについて詳しく解説していきたい。 【画像】2035年の日本車はどうなっている?官民で進める「モビリティDX戦略」とは?
次世代モビリティの本丸になることが確実視されている「SDV」
「自動車業界が“100年に一度の大変革期”にある」とは、誰もが一度は耳にしたことがあるはずだ。そのきっかけは2016年にドイツ・ダイムラーのディーター・ツェッチェCEO(当時)が、その変革を「CASE(ケース)」の4文字で表現したことに始まる。 これは「C=Connected」「A=Autonomous」「S=Shared&Service」「E=Electric」という4つのキーワードを重大トレンドとした頭文字の造語で、クルマの使い方や在り方が変わるだけでなく、価値やサービス、産業構造までもが変化していくという考え方に基づく。これを機に自動車業界は次世代モビリティの姿を模索する局面へと大きくシフトし始め、今やその流れが加速度的に進んでいる状況にある。 その背景にはクラウドやソフトウェア技術の進化が大きく関係している。実はこの十数年で大規模なクラウド基盤が世界中に広がりをみせており、それは今や社会インフラとして重要な役割を果たすまでになった。Connected化が進む自動車もその環境を活かし、車両の開発や機能のアップデートもクラウド上で展開されようとしている。つまり、こうした技術の高度化がCASEの後押しとなり、これを根底とするSDVという新たな潮流が生まれたと言ってもいいだろう。 では「SDV(Software Defined Vehicle=ソフトウェア・デファインド・ビークル)」とすることのメリットはどこにあるのか。それは自動車を購入後も、その機能を追加したりアップデートすることができるということにある。現時点ではその対象がインフォテイメントなど情報系にとどまっているが、今後はその範囲が制御系にまで及んでくる。こうなると、従来はエンジンなどハードウェアが自動車の性能を決定づけてきたが、SDVではこのソフトウェアによってそれが左右されることになるのだ。 つまり、自動車の性能を司る主役がSDVでは「ハード」から「ソフト」に転換されるわけで、ここではそのソフトウェア開発の重要性が大きく増してきているというわけだ。 実はこうしたソフトウェアによって機能アップする考え方は、スマートフォンが先行していた。かつて携帯電話はその機能をハードウェアの性能で競争していたが、スマートフォンが一般化した今、その価値はインストールしたソフトウェアによって左右されるようになっている。ここではOTA(Over the Air)によってアップデートができるConnectedの環境が提供が重要な役割を果たす。これと同じようなことが自動車でも起き始めているわけで、その意味でもSDVは次世代モビリティの本丸になると見込まれているのだ。