10年間介護してきた父親が亡くなった。泣けない私は「冷たい人間」なのか【介護アドバイザーが解説】
高齢者が増える日本において「介護」は多くの人が避けては通れない道。そこには、お金や時間、人間関係……など、さまざまな課題が横たわっているようです。本稿では介護に悩む人のエピソードを紹介しながら、介護アドバイザーの横井孝治が注意点などを解説します。 【動画】父の死に泣けない私、冷たい人間なの?
◆長年介護してきた父が亡くなったけれど
「長年介護してきた父が亡くなりました。でも涙は出なくて。泣けない私は冷たいんですかね」 憂うつな表情で語るのはナオコさん(50代女性)。実家で両親と共に暮らしていましたが、10年前に父親ががんを発症。介護が必要になってからは、母親と2人で支え合ってきました。 しかし3年前、今度は母が認知症に。父だけでも精一杯だったのに、昨日のことすら思い出せない母親の面倒まで見ることになってしまったのです。 ナオコさんには姉が1人いますが、夫や子どもと一緒に実家から離れたところに住んでいて、実際の介護はナオコさんに任せきり。「何かあったら言ってね」と電話してくるだけだといいます。 そんな中、先月、父が他界。最期は母と姉と一緒に看取ることができたものの、大泣きする姉の横で、ナオコさんは悲しみを感じませんでした。どちらかといえば、ホッとした感じだったそう。 その後の葬儀中も泣き続ける姉は、周囲から慰めの声をかけられていましたが、一切涙をこぼさないナオコさんは姉や親族から「冷たすぎる」となじられるばかり。 「私は今、父が死んだことすら認識できない母をどう支えるかで頭がいっぱいです。それでも泣けない私は『冷たい人間』なのでしょうか」
◆「冷たい人間」であるはずがない
ナオコさんは日常的に愚痴をこぼす相手がいない状態で、10年間も介護を頑張り続けてきました。そんな人が「冷たい人間」であるはずがありません。 姉の言う「何かあったら言ってね」は本当に無責任な言葉です。自分のきょうだいに介護をしている人がいる場合、絶対に言わないよう注意してください。 「何もない限り、連絡してくるな」「できるだけ、私に迷惑をかけるな」 これを遠回しに表現すると「何かあったら言ってね」になるだけなのです。もし自分も介護の当事者だと認識していれば、「お父さんの調子はどう?」「診察の結果はどうだった?」「〇〇の手続き、私がやろうか?」など、もっと具体的な発言になるはず。 「すべて指示をよこせ」「でも、可能な範囲しかできないから、難しいことは言うなよ」と伝えてくる姉のほうが冷たいのではないでしょうか。