大谷翔平の移籍を巡る新ポスティングシステムは大リーグファーストで決着か
海外FA権を得る前の日本人選手が大リーグへ移籍する際に利用するポスティング制度について、大リーグ側から、NPBへ改正の申し入れがあったことが明らかになったのは、先月8日のこと。およそ10日後、大リーグのロブ・マンフレドコミッショナーも、改正の意向を持っていることを認め、水面下で交渉が進められている。 ポスティングシステムは、入札額の最も高い球団が交渉権を得る方式だったが、2013年に改正され、日本側が2000万ドル(約22億円)を上限に譲渡金を設定。それに応じた球団は、どの球団でも選手と交渉ができる方式に変わった。ただ新ポスティングは、1年ごとの更新で、双方から改正申し入れがない場合は自動更新されるが、改正の意向が示された場合は、協議されることになっていた。現在、協議中の新ポスティングシステムは、どうなるのだろうか。 おそらく日本の側に立てば、来月5日に23歳となる日ハムの大谷翔平の移籍を前提として、まずは、昨年末の大リーグ労使交渉で決まった1)25歳未満、2)プロ6年未満 (以下25ー6ルール)の選手が移籍する際、マイナー契約しか結ぶことができず、契約ボーナスの上限も約1000万ドル(約11億円)に制限されるーーという新協定に、日本人選手が含まれない、ということを認めさせたいところだろう。 また日本球団に入る2000万ドル(約22億円)の譲渡金の上限を撤廃、或いは上限を引き上げたいという意向が強い。2013年の交渉では、入札額1位と2位の中間という線で一度合意した経緯があるが、せめて、その案に戻したいというのが本丸か。 ところが・・・。 交渉の流れを知るある関係者は「上限の撤廃はありえない」と話した。 「確かに前回、“中間”という落としどころをさぐったが、日本でも反対の声があったように、大リーグでも資金力のない球団から、金持ち球団に有利な制度だと批判の声が出て、最終的に2000万ドル(約22億円)という上限を設けた経緯がある。そもそも選手ではなく、日本の球団に多額のお金が流れる旧ルールには、批判も多かった。逆行することはない」 球団のポケットから出る額は同じなので、そこには大リーグ選手会の意向が強く働いているのだろうが、どうやら中間案は問題外。むしろ、大リーグとしては、「上限をさらに下げたい」のが本音のようだ。日本の球団にお金が流れることへの抵抗は、思った以上に強い。 ただそうなると、ポステイングシステムは、よりフリーエージェントに近い性格を帯びることになり、結局は、田中将大が楽天からヤンキースへ移籍した時のようにマネーゲームを招く可能性がありそうだが、「だからこそ、不満の受け皿として、“25-6”ルールがある」と言う。 「入札の上限はこれまで通り2000万ドル(約22億円)。で、大谷がこのオフに来るとしよう。各チーム、オファー出来るのはマイナー契約だけ。契約ボーナスには多少差が出るが、ある程度は、公平な交渉となる」 入札の上限をさらに下げれば、どのチームも大谷獲りに参加できる。大リーグでの実績がない大谷に対し、いきなり莫大な年俸を払うリスクもなくなる。 なるほど、その限りではフェアだが、それでも大リーグ側が改正の申し入れをしたということは、誰かに不都合があるのだろう。大方、お金を持っているチームが、それを利用できないことに不満を覚え、選手会あたりを焚きつけて、“大谷がかわいそうだ”とコミッショナーに迫ったか。 その裏には契約ボーナスに関する新ルールも一因として見え隠れする。