大谷翔平の移籍を巡る新ポスティングシステムは大リーグファーストで決着か
大谷ら、25-6ルールが適応される海外の選手にオファー出来るボーナスの上限は、今年から前年度の勝率、市場の大きさ、収入などが加味された上で30球団が3つのグループに振り分けられるようになった。便宜上、A,B,Cに分けると、Aグループは575万ドル(約6億3000万円)、Bグループは525万ドル(約5億8000万円)、Cグループは475万ドル(約5億2000万円)だが、上限の75%をトレードすることが可能で、Aグループ同士でそれが成立すれば一方のボーナス額は最大で約1060万ドル(約11億6000万円)となる。 これまでも上限はあり、ペナルティを覚悟すれば、超えることも可能だったが、今年7月2日の契約から超過が認められなくなった。一方でこれまでのペナルティは残るため、カブス、ドジャース、ナショナルズ、ジャイアンツら11球団は今オフ、大谷と契約しようとしても、オファー出来るボーナスの上限はたったの30万ドル(約3000万円)だ。カブス、ドジャースなどは大谷に興味を持っていると報じられているだけに、このあたりが、ポスティング制度の改正に絡めて、“日本人選手を契約ボーナスのルール適用外とすべき”という狙いで改正に動いている可能性はある。 ただ、そうした個別の事情がどうであれ、働いているのは、すべて大リーグありきの原理である。まさに、大リーグ・ファーストだ。 「日本側としては、こちらが提案したものを受け入れるしかないだろう」と先ほどの関係者。 「決めるのは、大リーグだ」というわけである。 そこに交渉の余地はないのか。日本は大谷という切り札を使って有利に交渉を進められないのか。 「仮に大谷が来ないことになっても、こうした交渉で譲歩することはない。それが大リーグという組織だ」 大谷が来ることでもたらされる経済的インパクトよりも大事なのはメジャーのメンツだという。 一方、日本側もNPBが一存で交渉にイエス、ノーと言えない事情がある。 これまで青天井だった入札額に上限を設けられる転機となった2013年の改正時も、一度は入札1位額と2位額の中間案で決着がつきそうだったが、持ち帰って12球団のオーナー会議に計ると、楽天ら複数球団が反対。意見をまとめられない間に、メジャー側も選手会などが反応して2000万ドルの上限案に変更されたという経緯がある。いちいちメジャー側の強硬な言い分を持ち帰って協議していれば、交渉を有利に運ぶことなどできるわけがない。今回は、当面の当事者球団となる日ハムの意見が尊重されるだろうが、将来的にポスティング利用の可能性がある楽天や西武なども強い主張をするものと考えられる。 「日本の事情など知ったことではない」ーーという交渉姿勢を誰よりも知っているのは日本側。しかも交渉に臨む背景も日本側は脆弱とくれば、また大リーグファーストでの決着となってしまいそうだ。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)