スカイマーク破たんと客船人気 神戸の「空と海」の玄関で明暗
航空会社「スカイマーク」の経営破たんの影響で、運航便のうち約7割をスカイマークで占める神戸空港(神戸市)の先行きが不安視されています。ANAホールディングスがスカイマークを支援する方向性となり、「廃港」など最悪の危機はひとまず脱した印象ですが、「神戸空港の魅力を上げるには、現在の1日30往復に限られる発着枠の撤廃や、24時間空港化などが不可欠だが、関西国際空港などとうまく折り合えなければ厳しい」という指摘も出ています。一方、同じ神戸市の神戸港はクルーズ人気で、外国客船の入港が今年過去最高になる見通しで「復活」の兆しを見せており、神戸の空と海の玄関口は対照的な姿になっています。 スカイマーク再生、どうして引く手あまたなのか?
「神戸空港」3空港体制の中で正念場
神戸空港は2006年に開港し、現在は羽田便を筆頭に新千歳、仙台、那覇など8路線30往復便が運航されています。そのうちスカイマークは21往復と最大で、スカイマークの再建の行方は神戸空港にとっても死活問題といえます。民事再生法の適用を申請したスカイマークの支援には全日本空輸などを傘下に持つANAグループが参加する方向で、国内投資ファンドとともに5年以内の再上場を目指しています。スカイマーク破たん直後は神戸空港からの大幅撤退などの観測も流れましたが、同市空港事業部は「スカイマーク側から大幅な減便などの話は聞いていない」と話しています。 上村敏之・関西学院大教授(公共経済学)は「ANAのスカイマーク支援の見通しで神戸廃港など当面の危機は遠のいたとはいえる。ただ今後予測されるANAとの共同運航で、スカイマークの売りの安さは維持されるのか、マイレージの取り扱いはどうしていくのかなど課題は多い」とみています。ただANAの支援参加について最大債権者である米航空リース会社との足並みがそろっていないという観測もあり、スカイマーク再建の道は予断を許しません。 神戸空港は開港以来需要予測を上回ったことがなく、開港時に2015年度の予測は434万人を掲げていたものの、実際は200万人台を維持するのが精いっぱいな状況です。関西には現在、神戸空港のほか、大阪南部には関空が、大阪北西部には大阪国際(伊丹)空港があり、3空港体制になっています。最近は近隣の関空がLCC(格安航空会社)の誘致を強化した影響で、スカイマーク便から乗客がLCCに流れたともいわれ、破たん以前からスカイマーク頼みの神戸空港の運営には不安の声も出ていました。 もともと関空ができる前、関西の新空港候補は神戸沖が最有力とみられていましたが、反対運動が強く、結局大阪泉州沖に関空が開港します。しかし、1995年の阪神・淡路大震災後、当時の神戸市長が「防災の拠点」などの位置づけを強調して神戸空港建設を表明。市議会も空港推進派が多数を占めるようになり、神戸空港は開港。関西は「3空港併存時代」となります。こうした経緯もあってか関空は国際ハブ空港、伊丹は国内線の基幹空港とされ、神戸空港は「ハブ機能をサポートする地方空港」に位置づけになっており、「1日30往復枠や運用時間の制限(夜間は午後10時で終了)」といった関空、伊丹空港に実質配慮する政策もとられています。こうした背景も需要の伸びを欠く要因になっていると指摘されています。 関空と伊丹空港は2012年、経営統合され、さらに運営権を譲渡する方向性が決まっています。神戸市も関空、伊丹の運営権を取得する会社が決定したあと、神戸空港も加わった3空港の一体運営や経営権譲渡を働きかける方針を打ち出しています。上村教授は「神戸空港の経営を譲渡するといっても神戸空港がどれだけ財務に貢献できるかアピールしないと運営会社には買ってもらえない。1日30往復の規制撤廃に加え、海上空港の特徴を生かした24時間の空港運用などを進めれば価値は上げられるが、関空、伊丹にどう迷惑をかけずに主張していくかが課題だ。地方空港は現在、国際線も自由に誘致できるはずで国際線導入も主張してよいはずだが、どうやって近隣自治体に話を持っていくか難しい」と3空港併存の難しさを指摘しています。