高く売れたら「確定申告」が必要?「時計の譲渡」に税金がかかるケース、かからないケース【税理士が解説】
昨今、人件費や材料費などが高騰していることから、腕時計の価格も高騰しています。特に、高級腕時計ブランドの時計は、中古であっても価値が高まり、購入時よりも高額な値段で売却できるケースが少なくありません。そのため、所有する時計の売却を検討している人もいらっしゃるでしょう。では、時計売却によって得られる利益は、確定申告が必要なのでしょうか。税理士法人松本が、時計売却で得た収益と確定申告や税務調査の関係について解説します。
時計売却で得たお金は、原則として「課税対象外」だが…
所有している腕時計を売却して得られたお金については、原則として、課税の対象とはなりません。時計売却で得たお金に税金が課せられない理由は、時計は生活用動産として扱われるからです。 ■時計は「生活用動産」に該当 生活用動産とは、生活に必要な財産のことです。具体的には、自動車や家具、衣服などが生活用動産に該当します。生活用動産を譲渡した場合に得られる所得は、所得税を課さないことが決められています。 したがって、個人が自分で使用していた腕時計を売却する際に得られる所得は、生活用動産を売却して得られる所得となるため、所得税の課税対象になることはほとんどありません。 そのため、時計売却で所得を得た場合、確定申告をする必要はないのです。 ■ただし、時計売却で得たお金が「1本30万円以上」なら“譲渡所得”に該当 生活用動産である時計の売却で得られる所得は、原則として課税対象とはなりません。しかし、例外として時計売却の所得に対して税金が課せられる可能性が生じるケースがあります。 生活用動産であっても、1つの価格が30万円を超える貴金属や宝石、真珠、さんご製品、骨とう品、美術工芸品などを売却した場合は課税対象となるのです。そのため、ダイヤなどの宝石が埋め込まれた30万円以上のジュエリーウォッチに該当する時計を売却した場合には、譲渡所得に該当し、課税対象になるケースがあります。 また、骨とう品としての価値を持つアンティークの時計を売却した場合も、30万円以上の値が付けば、課税対象として申告しなければならない可能性もあります。 ■時計売却で税金が発生する場合の課税方法 ジュエリーがちりばめられた時計やアンティークの時計などで、30万円以上の価値があるものの場合、譲渡所得が発生する可能性があります。譲渡とは、所有資産を移転させる行為を指し、譲渡所得の対象となる資産を売買する行為も譲渡に含まれます。 譲渡所得は、譲渡資産の種類によって分離課税の対象と総合課税の対象になるものに区分されますが、譲渡所得が課せられる時計の場合には総合課税方法が用いられます。 総合課税とは、事業所得や給与所得など、そのほかの所得額と合計した額に対して、累進税率によって税額を計算する方法です。 <総合課税の譲渡所得の計算方法> 総合課税の場合、譲渡所得は次の計算式で計算できます。 【譲渡所得額=売却価格-取得費用-譲渡費用-50万円】 取得費用とは、購入した代金のことを指します。つまり、売却対象の時計を購入したときの費用が取得費用に該当します。また、譲渡費用とは売るためにかかった費用のことで、譲渡費用に含まれるのはインターネットなどで時計を売却する際にかかった配送費やシステム利用料などです。また、譲渡所得の特別控除額は50万円です。 例えば50万円で購入したジュエリー付きの時計を、時計買い取り店に出向き、100万円で売却したとします。取得費用が発生しなかったと仮定すると、この場合の譲渡所得額は、次のように計算できます。 【100万円-50万円-50万円=0円】 したがって、この場合の譲渡所得額は0円となり、時計売却によって得た所得に対する納税の義務は発生しないことになります。 先ほど、30万円を超えるジュエリー付きの時計やアンティークの時計を売却した場合は、課税対象となると説明しました。しかし、譲渡所得には50万円の特別控除があるため、実際には売却価格が取得費用と譲渡費用、50万円を合計した額を上回らなければ、課税対象とはなりません。つまり、少なくても、時計売却によって得られる利益が50万円を超えなければ、確定申告をする必要はないというわけです。