新浪剛史氏が「日本に“GAFAM誕生“必要ない」と断言する理由。インフレ時代の勝ち筋と戦略
NVIDIAの製品を支えているのは日本の技術
── 2023年4月の代表幹事就任にあたり「共助資本主義」を打ち出しました。まだ広く浸透していないと感じています。 インフレになり、経済成長する可能性が高まっています。ただ、景気が良くなっている実感はないでしょう。トリクルダウン(利益の再分配)が起きていないからです。その状況で、これまでと同じ資本主義の発想でいいのでしょうか。 もちろん企業にとって、資本主義はイノベーションを生み出す意味で重要です。しかし、これまでの資本主義はWinnerとLoserを生み出し、格差を広げてきた。 アメリカはかつてコミュニティを重視し、助け合う社会でしたが、金融資本主義が台頭して極端な格差が生じました。 日本もそれでいいのかと言うと、やはり私たちはLoserになったとしても挑戦し直せる社会をつくっていくべきだし、助け合う社会をつくっていきたい。それを企業が中心になって構築していこうというのが、共助資本主義です。 ── なぜ「共助」なのでしょうか。 この30年間でさまざまな社会課題が噴出し、公助では解決できなくなっているからです。地域ごとに課題が異なっているため、中央政府では対応し切れないのです。 我々企業が事業で得た利益を元に、NPO、場合によっては地方自治体の皆さんと一緒に社会を良くすることに取り組んでいく。それが社会の安寧につながり、企業の繁栄にもつながるのです。 ──「日本らしい資本主義」という意味合いもありますか。 そうですね。私は、日本でGAFAMやNVIDIAのような企業を生み出す必要はないと思っています。世界をリードする企業を、つくれない日本に問題があると考えなくていい。 巨大テック企業、例えばNVIDIAの製品を支えているのは日本の部品や技術ですし、日本の強みはそこにあるわけですから。その強みのベースにあるのが助け合える力なのです。
日本の強さは「助け合える力」にある
── 1980年代後半に新浪さんがアメリカに留学されたとき、日本企業の強みはその企業文化だと思ったと、先日あるカンファレンスでおっしゃっていたのが印象に残っています。 例えば人への敬意や人に迷惑をかけない、こうしたら人が喜ぶのではないかといった細やかな配慮ができるというのが日本企業の「助け合える力」です。 サントリーでアメリカ蒸留酒大手・ビーム社を買収した後に、それが日本人の強みだとつくづく感じました。 些細なことかもしれませんが、そうした配慮の積み重ね、チームワークの上に自動車も不動産もインフラも出来上がっている。 その強みは圧倒的な価値ですし、外国企業にはない企業文化です。世界の企業と差別化できる点はそこで、サントリーのウイスキーブランドが世界で何度となく1位をとっているのもその価値をベースに世界で戦っているからだと思います。