他人事ではない「水原一平騒動」に経営者が学ぶ事 問題点はチーム大谷のガバナンス欠落にある
■大手に任せているから大丈夫という放漫 信頼関係が築けていたからこそ右腕による不正に気づけなかったというのは、一般企業のオーナーにも言える話かもしれません。 仕事からプライベートまですべてを把握している人物を右腕として置くのは、時としてリスクを伴います。 では大谷選手の場合、水原氏以外の人物を通訳として雇う選択肢はそもそもなかったのでしょうか。問題は、チーム大谷としてともに動く、代理店にもあります。
大谷選手のエージェントであるネズ・バレロ氏は、CAAスポーツに所属しています。CAAスポーツは、トム・ハンクス氏など著名なクライアントを抱えるエージェント企業、CAAのスポーツ部門です。大谷選手の代理人として理想的な大手企業であり、安心だと思われる方も多いのではないでしょうか。 ところが訴状によると、CAAスポーツは大谷選手の代理人であるにもかかわらず、日本語を話せるスタッフを雇用していなかったそうです。
さらに、日頃から密なコミュニケーションを持つことが大切な大谷選手と直接話すことはなく、すべて通訳である水原氏を介してコミュニケーションが取られていたとされています。 エージェント側にも、英語が堪能ではない大谷選手とコミュニケーションを取るために、日本語が話せるスタッフは必須なのではないでしょうか。 大谷選手が所属するドジャースの本拠地、カリフォルニア州における日本語通訳の年収は、650万円から1250万円ほどだと言われています。それにもかかわらず、水原氏の通訳だけに頼っていたことに、衝撃を受けた人は多いことでしょう。
「大手に任せておけば安心だ」――。中身を見ずに外見だけで業者選択をする経営者の方は多いのではないでしょうか。 しかし、大手だからといって常に最高のサービスを提供できるわけではありません。看板だけではなく中身を精査することができれば、今回の悲劇は防げた可能性もあったのかもしれません。 もう1つ、今回の不正を見抜けなかった問題点として、弁護士や会計士の存在もあります。 弁護士は、常にクライアントの利益を優先する必要があります。本来であれば、大谷選手の会計担当者やファイナンシャルアドバイザーは、クライアントである大谷選手によって直接雇用され、大谷選手の利益を優先して仕事をする必要があります。