他人事ではない「水原一平騒動」に経営者が学ぶ事 問題点はチーム大谷のガバナンス欠落にある
■会計担当は大谷選手と一度会っただけ ところが訴状によると、彼らを雇用していたのは代理人であるCAAスポーツだったことがわかりました。 訴状によると、会計担当者は大谷選手とは最初の顔合わせで一度会っただけでした。後日、税務申告について大谷選手と話すために会いに行ったところ、水原氏が対応し、大谷選手は病気で給与口座のことは本人がプライベートにしたい、そして税務申告上の問題もないと回答し、この会計担当者は引き下がったとのことです。
会計担当者は、本来であればクライアントであるはずの大谷選手の利益を優先すべきところが、直接的な雇用主である代理人の顔色を窺っていたのかもしれません。 ことを荒立てないで自分の雇用維持を優先したような状況があったのかも含め、利益相反の観点で厳しく検証される必要があると思います。 私のクライアントである大谷選手に会わせてほしい。あなたは私のクライアントの通訳であって、私のクライアントではない! そんなふうにNO! と言えるプロフェッショナルがいれば、状況は変わっていたかもしれません。
残念ながら法律の世界でも、日本の弁護士がクライアントから海外の案件を受託後、海外の法律事務所に実務的な仕事を丸投げし、仲介料を稼ぐような案件も見受けられます。 クライアントとプロフェッショナルが直接契約をしていない仲介のような業態は、倫理的なリスクと問題を抱えている可能性があります。 では今後はチーム大谷としてはどうすればよいでしょうか。そのカギは、やはりガバナンスにあります。 組織においてガバナンスとは、相互チェックと監視によって、誰かに権力が集中するのを避けることにより、不正が起こる隙を作らないという考えです。
水原氏は通訳として野球のフィールドで言葉の壁を取り除くはずが、フィールドの外では情報を分断し、水原氏に情報と意思決定権が集中するように工作していた可能性があります。 情報と意思決定が特定の人に集中し、監視がしっかりとできていない状況。実は、日本企業の海外支社で多く見られます。 誰も海外に赴任したくないのに、彼はずっと行ってくれている。英語も堪能な彼に任せていれば大丈夫。 そんな手放しの信頼をおいて、形式的な監査だけで実質的な相互チェックと監視がされていないような海外支社では、なんとか成果を上げたいと思う現地社員の心理と合わさって、知らない間に大きなリスクを背負い込み、気がついたときには巨大な損失を抱えるような状況に陥りやすいのです。