「編集者の私が物語を左右してしまったのではないか」文芸誌編集者の漫画を描く中で見えた、彼らの謙虚さとは【北駒生インタビュー】
人と人が関わることで生まれる“風のような瞬間”に注目
――特に思い入れのあるシーンをあげるとするならいかがですか? 北:『書くなる我ら』は、人との関わり合いによって生まれる物語です。作家一人だったら生まれない、人と人が関わることで生まれる“風のような瞬間”が毎回クライマックスに起こります。1話で、天城が初めて瞬の小説を読んで心の中に風が巻き起こったり、4話では六波羅が小説家を志すきっかけとなるようなパッと花が散る瞬間を描いたり……。なかでも5話に登場する新人作家・卯月さんの高校時代の回想では、爽やかなだけではない、少し影のあるビターなシーンが描けたのではないかと思います。このシーンを描けたのはやっぱり文学だからこそと言いますか、その他の表現分野だったらこう描こうとは思わなかったはず。すごく思い出に残っているシーンです。 ――ありがとうございます。最後に読者の方に向けてメッセージをお願いします。 北:本作を通して、小説を書く人や文芸誌を作っている人たちが、どういう思いであるのかを身近に考えてもらったり、私自身やっぱり小説は素晴らしい表現分野であると感じていますので、作品をきっかけにぜひ小説に手を伸ばしていただけたりしたらと。 小説、文芸誌がテーマということで、難しいイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、『書くなる我ら』は人と人との関わり合いを描いたコミュニケーションの物語です。誰にでも置き換えられるような、普遍的な人との関わりを描いているので、肩肘張らずに豊かな気持ちになってもらえたら嬉しいです。 取材・文=ちゃんめい
【関連記事】
- 大人気ホラー『近畿地方のある場所について』背筋さんに、2冊の新作についてインタビュー「自分の中にある、相反する3つのホラーに対する価値観を反映」
- 『キャプテン翼』高橋陽一「良いシュートが描けるとゴールさせたい」。ネーム連載の最新シリーズで22歳の大空翼が❝W杯優勝❞を掴むまでの構想とは【インタビュー】
- ハリソン山中はお金が好きだが、同時に嫌いでもある。『地面師たち』原作者が語るキャラクター造形とハリソンの次なるターゲット【新庄耕インタビュー】
- 古舘伊知郎「下品を承知で喋り続ける」実践する生涯現役であるための準備学【インタビュー】
- 愛し合うのは「傘」と「傘立て」!? 正気を疑うBLマンガ『放課後水入らず』はなぜ生まれたのか【BLマンガ家・あぶくインタビュー】