「おっさん、またかよ」月収95万円だった“鬼部長”。いまは時給1,250円、娘と同い年の上司に呆れられる“62歳シニアアルバイター”…元エリートが定年後、プライドを砕かれながら今日も出勤する理由【CFPの助言】
同僚との仲を深めようと懸命に努力
陰口を言われることが、自分のなかに原因があることをわかっていた田中さん。同僚たちと親睦を深めようと努力しました。休憩室で、自分の身の上話などをしてみましたが、そうするとシラケてしまうのです。 そこで、ふとしたときに話した現役時代のしくじり経験を主婦アルバイトの女性が笑ってくれたことを機に、自慢話ではなく失敗談などで場を盛り上げるように。時間が掛かりましたが、少しづつ距離を縮めていくことができたそうです。 いまだに若い人からきつい口調で注意を受けたり、見下したような態度をとられることもあり、その度にプライドは傷つきます。しかし、カフェで少し前の自分と同じように休日返上で黙々と仕事を行っていたり、資格の勉強をしていたり、日々のストレスに耐え顔をゆがめながらタバコを吸っていたりする、頑張る人々の姿を見ると励まされました。 60歳を超えて惨めな想いもありながらも、田中さんは今日も出勤しています。
老後の資金計画の必要性
田中さんのケースでは、セカンドライフでの新しい仕事でやりがいを見つけることができ、非常に素晴らしいですが、一方で注意点も。病気やケガのリスクが高まる高齢期においては、いつまで現状のように働き続けられるかはわかりません。老後の資金計画が甘かったことによる代償は、あとになって大きく響いてくる可能性も高いため注意が必要です。 田中さんは現役時代に高い収入を得ていましたが、将来の資産形成の計画を立てることもなくお金を使っていたため、娘達の進学資金の準備ができず学資ローンを組んだり、車もローンを組み、住宅ローンも退職金での繰上げ返済をアテにして組んでいたため、老後の資産形成がほとんどできていなかったのです。 実際、現役時代に高収入であっても、稼いだ分を現役のうちに使ってしまい、十分な老後資金を用意できていない人は少なくありません。首都圏に住み、子どももいるとなると、年収1,500万円であっても額面の見た目ほど裕福な暮らしを長く継続できるわけではないのです。 しかし、大企業で高い収入を得ていた田中さんは、年金として、妻のものと合計し年間300万円程度を受け取ることができます。その点においては、支出をコントロールすることができるようになれば仮に病気やケガで現在の就業に支障が生じたとしても、生活することはできるでしょう。 しかし、家計の内訳も知らず、支出を把握しコントロールしようとすることもせずに、具体的にいくら収入があればいいのかもわからないまま、いまの生活を続けることはリスクが伴います。