料理家・今井真実さんがたどり着いた、インターネット時代にあえて「レシピ本」を出す意義とその役割
生姜焼き等、家庭でお馴染みの料理もひとひねりあって「そうきたか!」の連続。ああ、有賀さんの脳みそがほしい…
そしてこの本の最初に出てくるレシピが「生姜焼き」なのです。 生姜焼きって大人も子供も大好き! よく作ります、という方も多いのではないでしょうか。有賀さんの手にかかれば、「生姜焼き」というカテゴリーだけで5パターンものバリエーションが出来上がります。基本ができたら、あとはアレンジや発想を変えていけばOK! 薬味をたっぷり乗せたり、調味料や使う肉の種類を変えたり。 有賀さんの名著『豚汁レボリューション』(家の光協会)は、誰もが知っている定番メニュー「豚汁」を再解釈し、定義し直したその名の通り革命的なレシピ本です。 有賀さんは、誰もが知っている料理やレシピをアップロードし、そぎ落とし、一工夫を加える天才。これなら出来そう、たしかにそれを加えるとおいしそう! という、読み手の心を軽くして前向きに料理に取り組ませる力が、有賀さんのレシピにはあるのです。 本書では、この生姜焼きをはじめ、野菜炒め、チキンソテー、シチューなど、家庭でお馴染みの料理が、驚きをもって再定義されています。そのアイデアや、味の工夫は、ひとひねりあって「そうきたか!」の連続。ああ、有賀さんの脳みそがほしい。 読んでるそばから、食べてもいないのに、それは絶対おいしい!と言ってしまいます。
インターネット時代にあえて「レシピ本」を出す意義と、その役割とは?
最近私は、レシピ本の意義をずっと考えていました。今や何かレシピを探すときに使うのはほぼインターネットですよね。無数にレシピが存在し、私たちは情報をすばやく瞬時に得ることができます。 それにLEEwebを始め、雑誌に掲載された売れっ子の料理家やシェフのレシピもネットで検索できてしまいます。すごい時代ですよね。私のレシピもWEBにたくさん掲載されていますし、読者の方からの反応もすぐにもらえてとてもうれしく思っています。 昔よりずっと簡単にレシピを手に入れることができるようになった今、「本」の役割ってなんだろうって思っていたのです。 本書を読みながら思ったのは、「本」というものは著者の決意表明だと思いました。SNSやインターネットだと、どうしてもレシピは「点」であり、1品1品の羅列になっていきます。掲載されている「レシピ」は「料理の作り方」という役割以上をなかなか成し得にくい。 しかし、「本」はカバーから最後のページまで一つの物語の流れができています。すなわち、レシピを通して、素材に対しての考え方、時間の考え方、味付けのメソッド…著者の生活哲学など伝えたいことが発展的に表現できるのです。