過去最高益!データ主義で顧客を振り向かせる「三越伊勢丹」の戦略
〇三越伊勢丹絶好調の秘密3~「極秘データで館全体で勝つ」 最近、売り上げが伸びているという1897年設立のイギリスの老舗鞄メーカー「グローブ・トロッター」日本橋三越店。 「ありがたいことにお客様の認知度が少しずつ上がっている実感があります」(ストアマネージャー・堀田佳衣子さん) 好調を支えているのが、担当の三越日本橋本店セールスマネージャー・松林孝樹と定期的に行うミーティングだ。 百貨店側が持つ会員データを分析し、どんな客層が「グローブ・トロッター」を買ってくれそうなのか、販売戦略のアドバイスを行なってくれるのだ。 「すごく分析していただいている。データを基に弱みを教えていただけるので、ありがたい」(堀田さん) 百貨店ビジネスを徹底的に科学し、勝てる館を作り上げる。それが細谷流だ。
他にはないソファ&家電~デパ地下がここまで進化した
伊勢丹新宿本店本館5階のインテリア売り場。カラフルな色合いのソファに思わず惹きつけられるが、セットで620万円する。 「フランスの『ロッシュ ボボア』というブランドの『マジョン』というソファです。95センチ角のシートを1枚1枚、色や柄をお選びいただき、世界に一つしかない自分のソファを組み合わせて作っていきます。百貨店では伊勢丹新宿店のみのご紹介となります」(新宿ライフデザイン商品部・渡邉駿) さらに、他ではお目にかかれないというのがキッチン家電。1683年創業のドイツのキッチン機器メーカー「ガゲナウ」の商品は「百貨店では初登場となります」(渡邉)。都心の超高級マンションなどで人気があるという。 伊勢丹新宿本店には、こうした商品を楽しみにやってくる客も少なくない。客をワクワクさせる商品へのこだわりを、細谷は「高感度上質なこだわった消費を狙いたい。全てのお客様の『高感度で上質でありたい』という思いをどうやって捉えていくか」と表現する。 名付けて「高感度上質戦略」。誰もが持つ、ちょっと特別な消費へのマインドを刺激する。細谷はそれこそが百貨店の存在価値だと考えている。 三越日本橋本店のスイーツ売り場にも、オンリーワンがいくつもある。「ヒューモルガン」はバニラビーンズにこだわりぬいたスイーツ店。日本でこの三越日本橋本店にしか存在しない。チョコレートで有名な「ティール」も、百貨店等への出店は三越日本橋本店のみだ。 「ティール」を口説き落としてきたのが、三越日本橋本店バイヤー・井上孝だ。この日、訪ねたのは日本橋兜町に本店を構える「ティール」。 重厚な建物を使った店内、詰めかける女性たちのお目当ては、「チョコレートプリンにミルクアイスをどーん」(1210円)だ。 三越とは至近距離にあるため、「熱烈なラブコールを受けなければ出店しなかった」(シェフパティシエ・眞砂翔平さん)と言う。 「すぐに決断をいただけるわけではないので、悩みに悩んだ末に出店していただけるのは、毎回うれしいことです」(井上)