過去最高益!データ主義で顧客を振り向かせる「三越伊勢丹」の戦略
毎週水曜の開店前、伊勢丹新宿本店をチェックして回るのが、三越伊勢丹HD社長・細谷敏幸(60)のルーティンだ。 「各階にいろいろなイベントスペースがあり、そこが水曜日に新しくなるんです。新しいことがちゃんと表されているかを見ます。新しいものを出し続けないといけない。文化を売る商売なので」(細谷) そう語る頭の中には売り場のデータが徹底的に叩き込まれているという。 「平米あたりの売り上げ、利益がどのアイテムがどれぐらいなのか、科学しながら計算して。歩いてみると『なぜいいのか』が分かる感じがします」(細谷) 「百貨店を科学する」と言う細谷。最も重視しているのが「エムアイカード」やアプリに加入する会員を増やすことだ。会員であれば、何歳で、年間にいくら購入し、どんな趣味嗜好(しこう)があるかなどデータを分析し、より精度の高いサービスを提供できるという。 三越伊勢丹改革の現場で、細谷が繰り返し口にする言葉が「マスから個へ」だ。 「スタートは『マス』ですが、1回でも館内に入っていただいたら『個』にする。これが『マスから個へ』。人の力とデジタルの力を使って、そのお客さんは何が必要なのかを考えて、新しい提案をし続ける」(細谷) 大勢の来店客=マスから、個人一人一人を狙った商売への転換だ。
「隠れ個室」を特別取材~極秘データで売り上げアップ
〇三越伊勢丹絶好調の秘密2~「買う気をアップさせる隠れ個室」 三越日本橋本店や伊勢丹新宿本店には、限られた人しか入れないという「ザ・ラウンジ」がある。 年間購入額が300万円以上の顧客向けのラウンジだ。中は驚くほどの広さで、飲み物やお菓子も無料。今、利用者が急増しているという。 「平日で500~600名、土日で700~800名、ご利用いただいています。席数も拡大しました」(グローバルカスタマー担当・田澤光太郎) このラウンジの効果で客たちの購入金額も増えているという。 「来店頻度が高まり館でのお買い上げ金額も高まっているので、相乗効果は高まっていると思います」(田澤) さらに、店内のいたるところに常連客だけを案内する、「隠れ個室」と呼ばれる空間も。例えば来店前に要望を伝えれば、好みの服を揃えておいてくれるという。 「短時間でお客様が希望するアイテムを集めてご提案できます」(シニアカテゴリースペシャリスト・渋谷早甫子) 高級腕時計の接客専用の個室。吟味していた商品は、世界に6本だけ、価格1300万円のものだった。細谷は顧客を識別し、客に合わせたサービスを徹底的に磨いているのだ。