過去最高益!データ主義で顧客を振り向かせる「三越伊勢丹」の戦略
百貨店は終わっていない!~屋上からデパ地下まで客殺到
創業350年になる三越。三越日本橋本店の歴史を感じさせる塔がそびえる屋上には緑あふれる庭園が。その横にあるのは、分厚い肉を炭火で焼く「グリルテラス日本橋」(2024年10月14日まで開催。レギュラーBBQコース/3時間飲み放題、大人6270円、など)だ。 【動画】“百貨店を科学する”三越伊勢丹
年配客が多いイメージの三越本店だが、若い世代も多く来ていた。定番だったビアホールでなく、屋上バーベキューが新たな客を呼び込んでいる。 中央の吹き抜けに巨大な「天女像」がそびえる日本橋三越。日本の百貨店は三越から始まった。実は今、新たな客層を呼び込むことに成功している。
週末の朝、開店前の地下1階の食品売り場に集まっていたのは何組もの家族連れ。子どもたちはさまざまな店のユニフォームに着替える。向かったのは人気のサンドイッチ店「メルヘン」。 デパ地下で行われるイベント「夏休みこどもお仕事体験」(小学校1~3年生対象)だ。実際の店舗を使ってプロの仕事を体験できるとあって、家族連れに大人気。こうしたイベントで、三越はさまざまな客層を集めている。 一方、伊勢丹新宿本店。入口には開店前から行列ができ、「百貨店の時代は終わった」と言われていたのが嘘のような驚くほどのにぎわいを見せる。年間売り上げは3800億円と、バブル期を越えている。 2008年に老舗百貨店の三越と伊勢丹が統合した三越伊勢丹HDは、コロナのどん底から急回復し、過去最高益と絶好調だ。
財布のヒモが思わず緩む~三越伊勢丹絶好調の秘密
〇三越伊勢丹絶好調の秘密1~「急拡大!お得なカード戦略」 伊勢丹新宿本店本館6階の特設会場で大盛況だったのは貴重なワインが一堂に会したイベント「世界を旅するワイン展」。 世界20カ国以上から集められた見たこともないような商品の数々に、ワイン好きが殺到していた。会場の一角には、そんな貴重なワインを絶品のつまみとともに楽しめるコーナーもある。 来場者からは「数量限定のワインがあるので、先に買えるのはすごくお得」「ウイスキーの抽選も会員のみ参加できる」という声が。この日の来場者は「エムアイカード」の会員たち。翌日から開催されるワインイベントに、ひと足早く入れたのだという。 会場の入り口でチェックしていたのは「エムアイカード」。これこそが三越伊勢丹、好業績の秘密だ。実際に館内で聞くと、客の多くが「エムアイカード」の会員だった。 その魅力はポイントやクレジット機能以外にある。会員は「興味のある催事を選んでくれて案内される」「ふだん買っている情報に応じて最適な情報をもらえる」と言う。個々の会員に合ったさまざまなイベントに招待されるのだ。先述のお仕事体験イベントも「エムアイカード」会員限定のものだった。