大腸がんの肝臓転移、国内未承認の治療薬が効く可能性…医薬基盤・健康・栄養研究所など研究成果
大腸がんの肝臓への転移に対して、国内では未承認の悪性リンパ腫の治療薬が効く可能性があることを、マウスを使った実験で突き止めたと医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府)などの研究チームが発表した。論文が国際科学誌に掲載された。 【表】一目でわかる…主な「がん」の10年生存率
この薬は、悪性リンパ腫の薬としてドイツ製薬・化学大手バイエルが開発し、米国、台湾、中国で承認を得て販売している「コパンリシブ」。大腸がんの薬にはなっていない。
国内の大腸がんによる死者は年間約5万人で、うち半数以上が肝転移によって死に至ったとされる。肝転移には切除手術が最も有効だが、5年以内に7~8割が再発している。
同研究所創薬デザイン研究センターの足立淳・副センター長らは、大腸がんの患者のうち、肝転移した腫瘍を摘出後、抗がん剤治療中に肝臓にがんが再発した悪性度の高い症例に着目。採取した腫瘍の組織を網羅的に調べた。
抗がん剤治療の前後の腫瘍を比較したところ、再発した腫瘍で特定のたんぱく質が活性化していることが判明。このたんぱく質の働きを抑えられそうな薬剤の候補が、コパンリシブを含めて五つ見つかった。
コパンリシブを、肝転移の病巣に見られる悪性度の高い細胞や、この細胞と同じ特徴を持つ腫瘍が体内にあるマウスに投与すると、いずれもがん細胞の増殖が抑えられた。
足立副センター長は「研究成果が、大腸がんでの治験の実施や新薬の開発につながれば」と話す。
東京大医科学研究所病院の朴成和教授(腫瘍内科)の話「今回の研究は、がん細胞内で働いているたんぱく質から新薬候補を見つけ出した点がポイントだ。効く患者を見定め、効果的に治療できるようになることが期待できる」