ゼロ・ウェイスト宣言から20年目の葛藤と、自ら選んだ持続可能な未来
中庸を極めて地域を編集する立場に
── 地域の過去と未来、地域の中と外とのつながりを言語化して理解することは、町のあり方を考える上で重要ですよね。 東 そうですね。アイデンティティクライシスに陥ったとき、私は新しい何かを作ることより、誰かと誰かを繋いだり、組織の中間に入ったり、 翻訳や通訳をしたり、間合いに入るのが得意だと気づきました。RDNDを作ったり、カフェを運営したりしているのも、異なる世代や分野の人たちを接続するためです。 私が好きな言葉も「中庸」なんです。自分にとっての正解が、他の人にとっては正しくない可能性があるからこそ、どうやったら客観的な視点を持てるかとか、多角的に物事を見えるかに興味があります。だからゼロ・ウェイストに関しても「私たちはこう考えるけど、あなたの地域ではどうですか?」というやり取りをするのが好きだし、向いている。そう気づいたのが、ここ1、2年でした。 ── 様々な価値観や考え方の人やものの間に入って、繋いでいく。東さんは地域にとってそんな存在なんですね。 東 新しく作った一般社団法人「amu」の名前も、編み込んでいくとか編集の「編む」が由来です。 amuでは、ゼロ・ウェイストを目的として、上勝町に来たい企業やメディアの問い合わせの総合窓口を担っています。役場から委嘱を受けたメンバーもいるので、小中学校の授業の受け入れや、町内外のゼロ・ウェイストに関する普及啓発も行なっています。2030年を目処に実現を目指す、上勝町のゼロ・ウェイストタウン計画の実行部隊でもあり、そのための町内における実証実験や町民向けの勉強会の開催なども企画、開催しています。 ── 上勝町は知名度もあるので、プレイヤーはどんどん集まってきていると思います。そんなプレイヤー同士が繋がってない課題意識があったということでしょうか。 東 自分で何かをやりたい人たちの場合は、それぞれが自力でできるから、繋がらずに完結してしまう面もあって。あとは、新しく上勝町で何かを始めたい人たちも、最初は地域の取扱説明書みたいなものがないから、分からないことも多いですよね。例えば「このタイミングで、なぜ草刈りする意味があるんだろう」と感じることもあるかもしれません。 でも、すべての地域の暮らしをロジカルに説明できるわけではないですし、その体感が分からないと町内に新しく来た人も地元の人も、お互いに不信感が募ってしまいます。だから私のような人間が必要だと思っていて。誰かが何かするときに「とりあえずやってみよう」って思える環境を作れる人になりたくて、地域にとっての中間管理職のような立ち回りをしていますね。