「出生前診断」の5つの検査方法とは? NIPTや羊水検査などの精度やリスクを医師が解説
確定検査の精度とリスクは? いつ、どの検査を受ければいい?
編集部: 一方、確定検査にはどのようなものがあるのでしょうか? 仲田先生: 一般的におこなわれているのは、羊水検査と絨毛検査です。羊水検査はお腹に針を刺して羊水を採取する検査である一方、絨毛検査は胎盤の一部である「絨毛」に針を刺して採取して調べる検査です。どちらも胎児の細胞や胎盤の成分を採取して調べるので、検査の精度が非常に高いという特徴があります。 編集部: どれくらい精度が高いのですか? 仲田先生: 一般に羊水検査では、ほぼ100%の的中率とされています。その一方で、絨毛検査は羊水検査と比べて的中率が劣るとされています。なぜなら、絨毛検査では胎盤の組織の一部である絨毛から細胞を採取して検査しますが、絨毛は完全に胎児由来のものではありませんし、胎児と胎盤では異なる染色体型を持つことがあります。例えば、胎児だけがトリソミーで胎盤は正常な場合もあります。この場合は絨毛検査では見つかりません。また、正常と異常が混ざった状態である「モザイク」という結果が絨毛検査で出た場合、実際に赤ちゃんがどういう状態かを知るために、赤ちゃんの細胞が取れる羊水検査をすることになります。羊水検査の方が精度は高いので、現在では「NIPTで異常が見つかったら羊水検査が推奨される」というのが一般的な流れになっています。 編集部: NIPTで異常があったら、必ず羊水検査を受けなければいけないのですか? 仲田先生: いいえ、必ずしもそういうわけではありません。なぜかというと、検査で細胞を採取するため、0.1~0.3という非常に低い確率ではあるものの、流産する可能性はゼロではありません。医療機関によっては、NIPTで異常があったら羊水検査を推奨しているところもありますが、私は「羊水検査を受けるかどうかは妊婦さんやご家族の判断に委ねるべき」と考えています。 編集部: そもそも出生前診断を受けるかどうかや、NIPTで異常が見つかったときに確定検査を受けるかどうかなどは、妊婦さん自身の判断に委ねられるべきなのですね。 仲田先生: そう思います。出生前診断を受けることによって胎児に異常が見つかった場合、「心の準備をすることができてよかった」という人もいれば、「異常について知りたくなかった」と後悔する人もいます。そのため、出生前診断を受けるかどうかはパートナーとよく話し合い、万が一、異常を指摘されたときにはどう対応するかなど、事前に検討しておくことが大切です。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 仲田先生: たしかにNIPTは有用な検査ですが、その一方で「NIPTを受けたら胎児ドックは不要」と考えている人も少なくありません。しかし、NIPTと胎児ドックは調べる対象が異なります。NIPTでは染色体や遺伝子の異常を見つけることができますが、胎児ドックでは染色体異常などに由来しない形態異常といった先天的な問題を見つけることもできます。そのため、「妊娠初期ではNIPT、18週くらいの中期になったら胎児ドック」を受けるのが理想と考えています。たとえ胎児ドックで異常が見つかっても、実際には問題がないものも多く含まれています。あまり心配しすぎず、安心して出産に臨むために検査を受けてほしいと思います。