南北会談宣言 朝鮮戦争の「終戦」が日本にもたらすもの
日本が“最前線”でさらされる?
ダイエットの宣伝にまで使われるようになったおかげで一般にも知られるようになった「コミットメント」あるいは「コミット」するという言葉は、安全保障・外交論の世界では以前から頻繁に使用されていました。アメリカの要人が、尖閣は日米安保の対象だと発言することなどがコミットメントにあたります。 安全保障上のコミットメントの中で、もっとも強力なものが「軍の駐留」です。軍を駐留させるということは、その国・場所を防衛するという不退転の決意表明となるからです。もし攻撃が行われれば、駐留軍に死傷者が発生することとなり、駐留軍は戦闘せざるを得ない状況となります。その意味から、駐留軍は、派遣国を参戦させるための人質であるとも言えます。 つまり在韓米軍の撤退は、アメリカによる韓国防衛へのコミットメントの低下となります。撤退したとしても、言葉によるコミットは続けるかもしれませんが、いざ有事となった時に、それが物理的に可能なのかという問題も含めると、アメリカによる韓国防衛へのコミットメントは大幅に低下したということになるのです。
このことから想起されるのは「アチソン・ライン」が朝鮮戦争を誘発したという事実です。 アチソン・ラインは、1950年にアメリカ国務長官だったディーン・アチソンが提唱した「不後退防衛線」です。これが朝鮮半島の東側に引かれたことから、韓国は共産陣営に渡しても良いとの誤ったメッセージとして捉えられ、朝鮮戦争の誘因になったと言われています。 2013年、中国への接近を強める韓国に対し、アメリカのバイデン副大統領が、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領に向かって「アメリカの反対側にベット(ギャンブル用語で賭けるの意)するのは良くない」と発言していますが、今や文大統領は中国どころか北朝鮮に接近しており、在韓米軍が撤退するとなれば、アメリカはもう韓国は向こう側の国だと判断した結果かもしれません。 在韓米軍が撤退すれば、アチソン・ライン当時と同様に、アメリカは防衛ラインを朝鮮半島の東側、日本海上に引くことになります。 当然、日本は最前線となります。 日米安保は、今まで以上に重要性を増しますし、日本はより実効性の高い独自の防衛力を構築するとともに、米軍との連携を深めざるをえないでしょう。 空軍を中心とした在日米軍の増強もありえるでしょう。場合によっては、少数しか駐留していない米陸軍の駐留数を大幅に増やす必要が出てくるかもしれません。また、実際の戦力としてよりも、政治的な抑止効果が主な狙いとなりますが、非核三原則を見直し、必要な際は核を持ち込ませることを認めるべきでしょう。