巨人の岡本和真がプロ初満塁弾で本塁打王争い独走も”巨人大物OB”は「まだ4番の顔になっていない」
4番の役割を試される場面は3回にあった。 「送りバントです」 試合後、原監督が明かした非情なサインのあった重要な局面である。 1-1の同点で迎えた3回無死一、二塁で、原監督は、3番の丸に送りバントのサインを出した。広島の先発、床田寛樹の初球を丸は、セーフティ気味に一塁方向へ転がした。慌てて走ってきた松山竜平がノーステップで一塁へ送球したが、二塁寄りに大きくそれて、一塁をカバーした菊池涼介のグラブが届かなかった。その間に勝ち越しの走者がホームインした。 「送りバントの中で、いいバントヒットという形になり、ワンエラーをもぎとったというところです」とは、原監督の説明である。 “原采配“が流れを呼び、なお無死二、三塁で4番の岡本である。 最低でも、外野への犠牲フライが求められる場面で、岡本はフルカウントから明らかにボール球の高めのスライダーに手を出してセカンド正面のゴロに倒れた。見送れば満塁である。 岡本は、4番の仕事を果たせなかったが、続くウィーラーが犠牲フライ、さらに中島宏之がタイムリーツーベースで4-1として執念の“原采配“で作った流れを生かした。 広岡氏が「4番の睨みが利かない」と苦言を呈した理由は、打つべきところで打てなかったことと、ボール球に手を出して苦しんでいる床田を助けたことにあるのだろう。 また得点圏打率も物足りない。 .350あるが、セの10位。トップの阪神、サンズは.474、2位のヤクルト、村上が.455、3位の広島、鈴木は.438ある。ここ一番での一打は、まだ不足している。 巨人の4番とは特別なポジションである。歴代4番打者には、長嶋茂雄氏、王貞治氏、張本勲氏、中畑清氏、原監督、落合博満氏、高橋由伸氏、松井秀喜氏、阿部慎之助2軍監督ら名打者の名前が並ぶ。岡本は、89代目になるが、5年以上、フルに4番を任されてこそ真の4番打者である。広岡氏は、「巨人の4番は与えられて育てるポジションにはない」というのが、持論である。岡本は、高橋監督時代の2018年から「将来を見据えて」4番に座っているが、広岡氏からすれば、それは与えられた4番であり、まだ“お墨付き“を与えるまでには至らないのだ。 広岡氏は、こうも付け加えた。 「ヤクルトの村上も凄い素材だ。だが、彼もまたまだ4番としての睨みは利かない。ものには順序というものがあるのだ」 村上はプロ3年目の20歳、岡本も6年目の24歳である。 広岡氏が求める理想は相当高いのだが、それは彼らの能力を認めてこその期待の裏返しだろう。まだ岡本のシーズンは35試合が終わったに過ぎない。新型コロナの影響でイレギュラーなシーズンとなった120試合を終えたとき、広岡氏は岡本を「巨人の4番」として認めているのだろうか。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)