「ママ友だから断りづらい…」公民館での“体験会”の正体は?保育園のママグループに忍び寄る怪しい影
違法性を避けるための定番手段
清美さんは、会場でもらったサンプルのオイルを筆者へ送ってくれた。ふたをあけると、積極的に嗅がずとも、濃厚な香りがあふれ出す。これを肌に直塗りとは恐ろしい……と実感できた。
販促のための根拠なき健康トークと、精油の危険な使用法。この集まりにおける問題点はそこだろう。 本来の目的を告げずに面会の約束をして勧誘行為を行えば「ブラインド勧誘」という違法行為になるが、この会はあくまで「アロマクラフト体験会」。その場で会員になる手つづきをしたり、商品を売るわけではない。 つまり、行政からは「問題なし」と判断されるラインなのだ。 「もし商品を買いたいなら、会員になるとリーズナブルに購入できるから、興味があったら別途声をかけてくださいね、くらいの説明でした。でもそれで終わるはずがありません。後日、別の集まりでママ友たちが続々と入会している現場を目撃しました」
その後子どもたちは小学校へ進み、現在も保育園グループのママ友たちとのおつき合いがつづいている。そのグループを中心に、周囲に会員が着実に増えているようだ、と清美さん。
子どもを通じた関係性だから
でも、それを止めることはできない、と清美さんはため息をつく。 「マルチ商法だからやめたほうがいい。その利用法は危険だーー正面から正論を言うのは、すごく簡単です。でも、これからも子どもたちが同じ小学校に通い、地域の保護者同士、まだまだおつき合いがつづくんです。 親がもめることで、子どもの交友関係に影響がないともかぎりません。自分は手を出さないように、見て見ぬふりをするしかないんです」
特に声の大きいリーダー格のママ友が中心になっているのも、ツッコむハードルがさらに高くなっている。
マルチは人間関係を、壊す
こっそり行政にも連絡をしてみたが、たらいまわしにされた挙句、この時点でできることはほぼない、という結論に至ったという。
同じ健康法に取り組む仲間として、ひいては同じ権利収入を目指す仲間として、新たなグループを形成するママ友たちは、この後どうなっていくだろう。 家族を含む人間関係が焼け野原になる可能性、健康に不具合が出る可能性。縁を切ることはできないだけに、清美さんの心配は尽きない。でも、適度な距離を保って、ただ見ていることしかできない。 <取材・文/山田ノジル> 【山田ノジル】 自然派、○○ヒーリング、マルチ商法、フェムケア、妊活、〇〇育児。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のない謎物件をウォッチング中。長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、当連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。twitter:@YamadaNojiru
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