金型使わず車体パネル成形…日産自動車、「対向式ダイレス成形」の精度向上
日産自動車は金型を使用せずにロボットで自動車のボディーパネルを成形する技術「対向式ダイレス成形」を実用化している。小ロット生産の短納期化や低価格化が可能となり、生産が終了した旧型車の補修部品などで同技術を活用している。成形精度を高め、補修部品やカスタマイズ部品などに適用範囲の拡大を検討していく。 【写真】対向式ダイレス成形の成形精度を向上する「ファナック製ロボット」 対向式ダイレス成形は棒状の成形工具を取り付けたロボットを対向して配置。それぞれが「押し型」と「受け型」の関係となり、2台のロボットを最適に制御して対向する工具を連携させながら薄鋼板に押し付けて徐々に成形する(インクリメンタル成形)。複雑な凹凸形状の成形も可能だ。 従来、ボディーパネルは金型を製作しプレス成形で大量生産していた。ただ、一般的な金型は製作に約1年かかる。月1000―1万枚の量産品には向くが、多品種少量生産品に対応するには課題があった。 対向式ダイレス成形は金型を製作しないため3日―1カ月程度でパネルを取得でき、開発費用や開発時間を抑制。月100枚程度の少量品ならば最も安価に成形できる。 一方で課題となるのがプレス成形と比べて劣る寸法精度だ。改善に向けロボットをファナック製ロボットに置き換えるとともに、成形後に鋼板が反るメカニズムを解明。成形工具の形状や工具を動かす速度、成形経路(パス)などの各種条件を品質工学を活用しながら最適化している。「加工条件の最適化で寸法精度を高めることができる」(日産車両生産技術開発本部)。プレス成形と比べて課題となる加工の効率化にもつなげる。 成形精度向上に関する研究は品質工学会が主催する「第32回品質工学研究発表大会」で「品質工学賞発表賞金賞」を受賞した。顧客のニーズが多様化し、ボディーパネルへの要望も広がっている。同技術の適用範囲拡大とともに精度の向上に取り組み、2020年代後半にもプレス成形と同等レベルに引き上げたい考えだ。