『彼女』さとうほなみ明かす演技への思い
周囲と連絡を断って作品に集中
七恵が夫から壮絶なDVを受けていることを知り、レイはその夫を殺害。罪から逃げる2人が極限の状態で揺れ動く様を描くが、逃亡中に2人の関係性は徐々に深まりお互いが本当に必要な存在になっていく。撮影はいわゆる“順撮り”で、物語の時系列に沿って順番に進められた。 「順撮りだったので気持ちの移ろいに沿って自然に演技に入っていけた気がします。七恵は本当に心を開ける友達がいない中で、自分を知っているのがレイだけだったということに七恵自身はうまく言葉には出来なかった複雑な感情を抱いていたと私はずっと思っていて。もう自分は終わりだと、これ以上やっていけないと思ったときに、パッと顔が浮んだのがレイだと思うんです。でもレイと七恵の関係性が深まっていく中で、レイには大切な家族がいて、『私ってやっぱり独りなんだな』と感じて。実はそのとき役柄の上だけではなくて、私も本当に孤独だったんです」 さとうは七恵役に集中すべく、友人はじめ周囲の人々と連絡を断って作品に集中していたのだという。 「私は不器用で、そうしないと役に集中しきれないところがあって、現場でも周りの方たちとあまり話さないようにしていたので大変感じが悪かったとは思うんです。でもそのぶん七恵の精神状態を心で理解する度合が強くて、撮影中はずっと辛い状態が続きました。七恵は幼い頃から辛い思いをして生きてきた人ですが、唯一、救ってくれたり自分を愛してくれる人と一緒にいられた。それがレイ(水原)なんですよね。実際に私も撮影をしている中で希子ちゃんがそばにいてくれてほんとに良かったなと思えました」
好きだと思える役をやっていたい
キャリアの中でもひとつの転機となるような大きな作品になったようだ。ひとつひとつの作品に手ごたえを感じながら、今後も俳優業にまい進したいと目を輝かせる。 「好きだと思える役をやっていたいな、と思っています。好きということは自分自身が仕事を楽しめるということでもあり、その過程には辛さや苦しさがあってもいいし、全部ひっくるめての『好き』だと思うんです。これまで辛いからやめたいと思ったことも一度もないですし、本当に好きだと思えることの一つとして芝居が私の根本的な部分にあるのでこれからもずっとやっていたいですし、いろいろな役が今後もできたらいいなと思っています」 (写真と文:志和浩司)