「北朝鮮軍に死傷者続出も追加派兵の可能性」…朝ロ密着も韓国は外交空白
ウクライナ戦争の早期終結を望むトランプ次期米大統領の就任を控え、ロシアの北朝鮮軍「人海戦術」も本格化する兆候が表れている。北朝鮮軍の特殊部隊員に深刻な被害が出ているが、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は、ロシアのプーチン大統領により大きい勝利をもたらすために力を注ぐ姿だ。しかしこうした朝ロ密着の最大被害者である韓国は外交力を見せられずにいるという指摘だ。 ◆「死傷者続出…士気も低下」 ウクライナのゼレンスキー大統領は4日(現地時間)、「クルスク州マフノフカ村近隣で3、4日にロシア軍が北朝鮮軍歩兵とロシア落下傘部隊からなる1個大隊を失った」と述べたと、ロイター通信などが報じた。数百人にのぼる1個大隊が2日間で全滅したという主張だ。ロシアの「捨て駒」式の北朝鮮軍活用が続いているという傍証といえる。 死傷者が続出すると、北朝鮮は将校を派遣して原因の調査を始めたという報道もあった。ウクライナメディアの「イボケーションインフォ」は2日、「北朝鮮人民軍の将校が昨年12月27日にクルスクのロシア軍基地を訪問した」とし「最近の北朝鮮軍の大規模な死傷を調査するための目的」と報じた。同日、ウクライナ国防省情報総局は「北朝鮮兵士の士気が落ち、過飲の事例も出ている」とも明らかにした。 クルスクに派遣された北朝鮮軍1万1000人の3分の1に近い「3000人が死傷した」(ゼレンスキー大統領)という主張が出ているが、戦況はウクライナに不利になっているという指摘もある。ウクライナは最近、ロシアの反撃に押され、昨年8月に奇襲占領したクルスクの40%以上をまた奪われた。ブルームバーグ通信は先月28日(現地時間)、米当局者を引用し、「現在ウクライナはクルスクの半分を失い、数カ月以内に残りの領土も失うかもしれない」と報じた。 政府筋は「金正恩委員長の立場では死傷者が多く出るほどプーチン大統領に出す請求書が増えるということ」とし「確実な功績を立てるため年初に追加派兵する可能性も排除できない」と話した。20日に就任するトランプ氏が終戦ロードマップを本格稼働する前にプーチン大統領に確実な勝機を抱かせるため金委員長がさらに大きな犠牲も甘受する可能性があるという見方だ。 ◆直撃打を受けても手放しの韓国 しかしこうした朝ロ間の不法取引の主な被害者である韓国は首脳外交空白状態だ。戦場に派遣された北朝鮮軍が現代戦経験を習得してロシアの反対給付提供が行われることは韓国にとって直接的な安保脅威となる。また朝ロが6月に締結した「包括的戦略パートナーシップに関する条約」に明示された「戦時相互援助」条項(4条)を積極的に活用し、今後、韓半島(朝鮮半島)に対するロシアの発言権と介入の可能性を高めるという懸念もある。 漢陽大のオム・クホ・ロシア学科教授は「戦争が終わっても朝ロ協力は長期間続く可能性がある」とし「韓国が朝ロ軍事協力に影響を及ぼすことができるタイミングを逃してはいけない」と話した。続いて「北の軍派兵以降に事実上ふさがった韓ロ間の意思疎通から再開することが急がれる」と話した。 ◆トランプ氏の帰還…反ロ求心点が弱化か トランプ氏の帰還で西側の対ロシア連帯が求心点を失う可能性が高いという点も韓国には悪材料として作用する可能性がある。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が公言した北朝鮮軍派兵に対する「段階的・実効的措置」が現実的に難しい状況で、協調勢力も弱化すると予想されるからだ。 ただ、トランプ氏の終戦シナリオがプーチン大統領と金正恩委員長が望むようには展開されないという見方もある。梨花女子大の朴元坤(パク・ウォンゴン)北朝鮮学科教授は「ロシアが北の派兵を受けたという事実自体がそれだけ戦争遂行能力がすでに弱まったという傍証」とし「戦争を終わらせようとするトランプ氏の圧力の前でプーチン大統領も一定の譲歩をするしかないはず」と話した。続いて「ロシアの先端技術移転も今後、北の交渉力を高める可能性があるため、トランプ氏は容認しがたいだろう」と述べた。 一方、戦場で北朝鮮軍が追加で捕虜となる場合、普遍的人権の側面で韓国行き誘導など対応措置が迅速に行われるべきだが、政府はまともに対応しているのかという指摘も提起されている。昨年12月26日に捕虜となった北朝鮮兵は翌日に死亡したと、韓国の国家情報院は明らかにした。当時、国家情報院は関連事実を確認し、「後続状況を綿密に点検する予定」とだけ明らかにした。しかし似た事例がまた発生する場合、彼らを戦争捕虜と見るべきか傭兵と見るべきかなど法的地位をめぐる論争もある。 専門家は捕虜になった北朝鮮兵が韓国への亡命意思を明確に示せば国際法に基づき北朝鮮でなく韓国に送ることが可能だと見ている。しかしゼレンスキー大統領は「北朝鮮兵をウクライナ人を交換する用意がある」(昨年10月、KBSのインタビュー)と明らかにし、北朝鮮軍の韓国送還の可能性に懐疑的な見方を示したという解釈があった。