固体ロケット「イプシロン」が切り開く宇宙ビジネス 小型衛星を安価に打ち上げ
固体燃料ロケット「イプシロン4号機」が1月18日、鹿児島県肝付町にある宇宙航空研究開発機構(JAXA)内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられました。このロケットに搭載された7機の人工衛星は、それぞれ無事に分離され、打ち上げは成功しました。このイプシロンロケットとは、どのようなロケットで、今回はどんな人工衛星が宇宙に届けられたのでしょうか。(科学ライター・荒舩良孝) 【中継録画】固体ロケット「イプシロン」4号機、打ち上げ成功(映像提供:JAXA)
日本のロケット研究は固体ロケットから始まった
世界ではさまざまなロケットが打ち上げられています。それらのロケットは、燃料の種類によって「液体燃料ロケット」と「固体燃料ロケット」の2つに分けることができます。 液体ロケットは、一般的に液体の燃料と酸化剤を使用します。燃料と酸化剤は別々のタンクに入れられ、それぞれのタンクからパイプを通して燃焼室に送られるという複雑な構造が必要になります。ただし、燃料の燃焼を細かくコントロールできるので、ロケットの姿勢をしっかり制御し、人工衛星の軌道投入を精密にすることができます。一方、固体ロケットは、燃料と酸化剤を均一に混ぜ合わせて固め、機体に納めたロケットです。構造が簡単で、取り扱いやすく、コストが安いという利点があります。
日本のロケット研究は、1954(昭和29)年に東京大学生産技術研究所の糸川英夫博士らのグループによって幕が開きました。糸川博士らが研究、開発したのは、構造が簡単な固体ロケットです。つまり、日本のロケット研究は固体ロケットから始まったのです。今回イプシロンが打ち上げられた内之浦宇宙空間観測所は、糸川博士らが整備した東京大学鹿児島宇宙空間観測所を前身としており、これまで400機近い観測ロケット、科学衛星、探査機の打ち上げを実施し、日本の宇宙科学の発展を支えてきました。
日本では、液体ロケットのH2AとH2BがJAXA種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げられるので、ロケット発射場といえば種子島という印象が強い人も多いでしょう。しかし、内之浦宇宙空間観測所はロケット発射場として種子島よりも長い歴史をもっていますし、日本の固体ロケットの発射場として重要な地位を占めています。日本初の人工衛星「おおすみ」や小惑星探査機「はやぶさ」もここから打ち上げられているのです。